抄録
症例は46歳, 男性. 発熱, 頸部腫脹を主訴に近医入院, 両側膿胸の診断で, 当院に転院となった. 近医で採取された胸水からグラム陽性嫌気性菌が検出された. 胸部X線上, 両側胸水の貯留, 上縦隔の拡大, 頸部軟線撮影で頸椎下咽頭間の開大が認められた. CTでは, 頸部から縦隔まで連続した病変が詳細に観察できた. これらの所見から, 頸部蜂窩織炎から進展した縦隔炎が示唆された. CLDMを中心とした抗生剤投与, 両側の被包化された膿胸腔に複数の閉鎖式ドレナージを置き, 治療を行った. 縦隔ドレナージも検討したが, CTで局在性の縦隔病巣の膿瘍化は認められず, 行わなかった. 約2週間の間隔で撮影したCTで, 病像の推移を観察し, 必要に応じて胸腔ドレインの差し替えも行った. 約10週間の入院加療で軽快退院した. 縦隔炎の病態把握と治療方針の決定にCT所見が極めて有力な情報となった1例であった.