抄録
成人型呼吸促迫症候群 (ARDS) の発症進展には補体活性化の関与が想定されている. 補体共通経路の活性化産物である血漿中の膜侵襲複合体 (SMACと略) の測定を抗C5-C9抗体法及び抗MAC抗体法の2法で行い, 後者の臨床的有用性を認めた. 開腹術施行患者8名 (内1名はC5欠損症) 及び20%以上の熱傷患者5名の血漿中SMACを抗MAC抗体法にて測定し, その予後との関連を検討した. 病初期よりSMAC低値で, 以後も上昇のみられない症例は予後良好, 病初期より高値あるいは以後上昇したものは予後不良の傾向を示した. 更に, SMACの構成成分である S-protein も測定しSMAC減少傾向を示し死亡したARDS患者でその産生低下を認めた. 一方, 補体活性化時の初期産物であるC4d, Bbの測定を行ったが, SMACとの明らかな相関は見られなかった. 従って, 予後判定に S-protein とSMACの同時測定が臨床上有意義と示唆された.