1992 年 30 巻 6 号 p. 1097-1102
肺非小細胞癌126例を対象として血清NSE値を測定し, cut off 値を10ng/mlとして陽性率を検討したところ, 126例中29例 (23.0%) が陽性であった. 陽性率は組織型とは相関せず, 病期では, III期44例中9例 (20.5%), IV期71例中20例 (28.2%) と病期の進行とともに陽性率は増加した. 化学療法の効果が評価できた74症例のうち血清NSE陽性例は22例, 陰性例52例であったが, 陽性例の奏効率は50.0%, 陰性例では34.6%と, 陽性例が良好であった. 一方陽性例の奏効期間中央値は2.2ヵ月と, 陰性例の6.6ヵ月に比し有意に短く (p<0.05), 生存期間中央値も6.0ヵ月と陰性例の9.6ヵ月に比し短期間であった. すなわち血清NSE陽性例は, 化学療法に対する奏効率は良好であるが, 進展が早く予後は不良であると思われた. 抗NSE抗体による生検組織の免疫組織染色では, 血清NSE陽性例10例中3例が陽性に染色され, 血清NSE値の上昇は腫瘍組織中のNSE産生細胞による可能性が示唆された.