近年, 運動筋から放出されたKイオンにより筋肉疲労がおこることや, Kイオンが末梢化学受容器を直接刺激し, 換気応答を高め, この効果が低酸素により増強するという報告がなされ, 運動中に増加したKイオンが運動負荷の制限因子の1つになっている可能性が考えられる. そこで慢性肺疾患患者37例, 健常者9例を対象に, 運動負荷中の動脈血Kと運動時低酸素血症について検討した. 慢性肺疾患患者を最大負荷終了直後のPaO2によって2群 (I群: PaO2<55torr, II群: PaO2≥55torr) に分類し, 健常者を control 群とすると, 各群で動脈血Kは運動負荷中増加傾向を示し, I群ではII群や control 群に比べ有意に (p<0.05) 高値であった. I群II群では運動中のPaO2と動脈血Kの間に有意な負の相関 (r=0.3026: p<0.025) を認めた. 慢性肺疾患において運動中Kイオンの増加がPaO2レベルと関係があり, これが重要な運動制限因子の1つとなっていると考えられた.