1992 年 30 巻 6 号 p. 1136-1140
症例は33歳の男性. 平成元年8月の検診で胸部X線写真上, 上縦隔陰影の拡大を指摘されたが, 自覚症状がないため放置していた. その後10月頃より乾性咳嗽が出現し, 持続するため, 精査目的で平成2年3月7日に当院に入院した. 右上中縦隔の良性腫瘤, 特に食道および気管支嚢腫等を疑い, 手術を施行した. 手術時, 嚢腫の下方より右側胸管が嚢腫内へ流入しているのが確認された. 嚢胞内腔は単層立方上皮で被われ, 肉眼的に胸管が嚢胞内に入り込んでいた部分の上皮は, 嚢胞上皮に連続性に移行していた. 嚢胞内容液は外観的には水様透明で, 正常リンパ液組成や報告例の組成に比して, 蛋白質, コレステロール等は低値を示した. リンパ管嚢腫の起源については多くの説があるが, 本例では右側胸管からの起源であることが示唆された.