抄録
症例は32歳女性. 25歳時に気管支喘息の診断を受けたが疾患, 治療に対する理解力が不良で十分な治療が施されず症状は次第に増悪. 30歳時より常に歩行時の息切れを自覚する様になり32歳時からはトイレ歩行時にも息切れを生じ日常生活にも支障を来す様になったため来院. 胸部X線写真上, 著明な過膨張所見を認め, 心電図にて右房負荷所見あり血液ガス検査ではPaO2は61Torrと著明低下. 入院後, ステロイド剤の投与を含めた適切な治療により症状は著しく軽快. 胸写も過膨張所見は軽減しPaO2も正常となった. 症状寛解期の肺機能検査において肺拡散能の低下は認められなかったが胸部X線CT上, low-attenuation area が僅かではあるが認められた. 喫煙歴なくα1-アンチトリプシンも正常の若年の喘息患者に気腫性の変化が認められたため, 喘息と肺気腫との関係において何らかの示唆を与える症例と考えられたので若干の文献的考察を加え報告する.