日本胸部疾患学会雑誌
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高濃度酸素吸入による換気・血流比不均等分布の改善-オレイン酸肺損傷における解析-
山口 佳寿博森 正明高杉 知明小山田 吉孝河合 章浅野 浩一郎青木 琢也藤田 浩文鈴木 幸男
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1994 年 32 巻 8 号 p. 739-746

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抄録

健常成犬ならびにオレイン酸急性肺損傷犬を用いて高濃度酸素吸入 (60%酸素) が肺内換気・血流比 (VA/Q) 分布に及ぼす影響を検討した. VA/Q分布を多種不活性ガス洗い出し法によって求め, 肺血流分布 (Q) ならびに肺胞換気 (VA) 分布の中心的・平均的位置を表わすVA/Q値 (mean Q, mean VA) を算出した. VA/Q分布の分散を示す一つ目の指標として mean Q, mean VA を中心値としたQ分布ならびにVA分布の標準偏差を求めた. VA/Q分布の分散を表わす二つ目の指標として指標不活性ガスの動脈血・肺胞気ガス分圧較差を血液, ガス分配係数に対してプロットし, そのカーブによって囲まれた面積 (aAD area) を求めた. 高濃度酸素吸入によって健常肺のVA/Q分布の分散は軽度増加したが急性損傷肺においてはシャント率ならびにVA/Q分布の分散が減少した. 以上より, 高濃度酸素吸入は健常肺のVA/Q不均等分布を増悪させるが急性損傷肺のそれを逆に改善させるものと結論した.

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