抄録
症例は25歳男性. 血友病Aのため生後より血漿輸血を, 6歳以降は濃厚第VIII因子製剤を受けていた. 1992年4月より咳, 痰, 8月より38~39度の発熱が出現した. 入院時の白血球数2,500/μl, リンパ球数725/μl, CD4陽性細胞数9/μl, 抗HIV抗体陽性であった. 胸写上, 両肺野にび漫性に小結節陰影を, 右上肺野を中心に空洞を伴った陰影を認めた. 同部に対して経気管支的肺生 (TBLB) を施行し, グロッコト染色で嚢子壁が黒褐色に染色されカリニ肺炎と診断した. ST合剤, ペンタミジンによって一時軽快した. カリニ肺炎は通常肺門部を中心に間質性陰影を来し, 低酸素血症を来す場合が多いが, 約20%の例が非典型的な経過をとる. なかでも嚢胞ないし空洞形成を伴う例は約10%と言われているが, 今回TBLBにて診断が確定し治療にて軽快したのでここに報告する.