1996 年 34 巻 10 号 p. 1168-1173
夏型過敏性肺臓炎 (夏型HP) 発症時血清IgEが高値を示し, HPの改善と供に血清IgE値も正常値へと減少し, さらに Trichosporon mucoides, (T. mucoides) に対する皮内反応 (15分値) が陽性を示した症例を経験した. 症例は56歳, 女性. 1994年7月頃より発熱, 咳嗽が持続, 10月には軽快したが翌年8月頃再度同様の症状が出現し, 経口抗菌薬の投与を受けるが軽快せず紹介入院となった. 入院後, HPも考え無治療で様子をみ, 発熱, 血清の炎症反応の軽快, 動脈血ガスの改善が得られた. さらに, 帰宅テストで陽性, その翌日施行した経気管支肺生検ではHPに一致する組織像が得られた. 血清 T. mucoides 抗体はTIMM1573株で陽性を示した. これらの事より本例を夏型HPと診断した. 発症時血清IgEは721U/dlと高値を示し,HPの改善と供に徐々に低下, 正常値となった. さらに T. mucoides に対する皮内反応ではTIMM1573株で15分値のみ陽性となった. 本例はHPとI型アレルギーとの関係を示唆する症例と考えられた.