1996 年 34 巻 12 号 p. 1349-1353
急性呼吸促迫症候群 (ARDS) において,好中球のアズール顆粒に存在し, 抗菌活性や細胞障害活性を有するデフェンシンの血漿および気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中濃度を測定し, その病態生理的役割を検討した. ARDS患者では健常者や特発性肺線維症 (IPF) 患者と比較して, BALF中の好中球数が著増していた. またARDS患者のBALF中ならびに血漿中のデフェンシン値は, 健常者, IPF患者やびまん性汎細気管支炎患者と比較して著増していた. ARDS患者ではBALF中デフェンシン値は同時に測定したBALF中インターロイキン8 (IL-8) 値と有意に相関していた. 好中球がARDSの病態に大きく関わっていることは既に報告されているが, 今回の検討では好中球から放出されたデフェンシンがARDSの肺組織傷害に関与している可能性が示唆された.