1996 年 34 巻 12 号 p. 1359-1363
症例は42歳女性. 入院時血清CA125が軽度上昇を示し, 縦隔腫瘍のX線透視下嚢胞穿刺により得た嚢胞内容液の細胞診が, class III およびCEAが高値を示したことより悪性腫瘍が示唆されたが, 術後の病理組織検査では, 成熟縦隔奇形腫と診断された. 術後に嚢胞内容液中の各種腫瘍マーカーを測定したところ, CEA, CA19-9, CA125, SLX, NSE, TPA, Ferritin および elastase 1が高値を示した. 一方, 免疫組織学的検査にてCEA, CA19-9, CA125, NSEが陽性を示した. 嚢胞を伴う成熟縦隔奇形腫は腫瘍組織の性状により嚢胞内に多種類の物質, 多彩な腫瘍マーカーが存在する可能性が示唆された.