日本胸部疾患学会雑誌
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高CEA血症を呈した気管支粘液栓合併気管支喘息の1例
松尾 圭祐荒木 雅史渡辺 洋一平木 俊吉
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1997 年 35 巻 8 号 p. 883-887

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抄録

症例は43歳女性. 喫煙歴なし. 気管支喘息の治療中で時々発作を繰り返していた. 子宮筋腫, 卵巣嚢腫の摘出術後経過観察中に血清CEA値が24.1ng/mlまで上昇したため, 悪性疾患の存在を疑い全身検索を行った. しかし胸部X線写真, 胸部CTにて気管支粘液栓の所見を認めるのみで悪性疾患は指摘されなかった. 気管支鏡検査では右肺下葉入口部に気管支粘液栓が認められ下葉入口部は閉塞していたが, 可視範囲粘膜に異常所見は認められなかった. 気管支粘液栓の除去目的でBALを施行したところ気管支の鋳型状の粘液栓が吸引され, BALF中のCEA値は6,100ng/mlと高値を呈していた. その後計5回のBALにより粘液栓は完全に除去され, 血清中およびBALF中のCEA値は著明に低下し喘息発作もなくなった. これらのことから気管支喘息による気道内におけるCEA産生亢進および気管支粘液栓内によるCEAの気道内長期貯留, 血管内への移行促進がその機序として考えられた.

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