1997 年 35 巻 8 号 p. 878-882
健常人男性に右中葉の遷延性肺炎としてみられた肺ノカルジア症を経験した. 気管支鏡検査では悪性腫瘍を思わせるポリープ様病変が右B5biiを閉塞していた. 生検で糸状菌よりなる菌塊と判明し, Nocardia asteroides が培養同定された. 抗生剤治療に反応不良のため, 右中葉切除を施行したところ, ノカルジアの菌球が嚢胞状に拡張した気管支内腔に充満し, 一部はポリープ状となって周囲の気管支内に突出していた. 嚢胞壁の一部には潰瘍が形成され, 周囲肺にもノカルジアの散布をみとめた. 本例の難治性の原因は高度な菌球形成によると考えられた.