2026 年 82 巻 3 号 論文ID: 26-1618
【目的】膵臓の拡散強調画像においてreadout-segmented echo-planar imaging(RS-EPI)の有用性をsingle-shot EPI(SS-EPI)と比較して評価した.【方法】健常ボランティア14名を対象にSS-EPIおよびRS-EPIで撮像し,膵臓の描出面積,信号雑音比(signal-to-noise ratio: SNR),鮮鋭度,apparent diffusion coefficient(ADC)値,撮像時間を比較した.描出面積はhalf Fourier acquisition single-shot turbo spin echo(HASTE)画像で正規化し,SNRは同一関心領域法,鮮鋭度は信号強度のプロファイルからsharpnessを算出した.【結果】SS-EPIとRS-EPIでそれぞれ描出面積は0.84±0.11と0.97±0.11(P<0.05),SNRは膵頭部で22.0±11.0と12.4±4.2(P<0.05),膵体部で19.0±6.9と11.1±3.0(P<0.05),膵尾部で19.8±9.0と14.7±5.6(P=0.08),鮮鋭度は膵頭部で0.36±0.11と0.33±0.06(P=0.36),膵体部で0.37±0.07と0.41±0.11(P=0.28),膵尾部で0.36±0.07と0.32±0.08(P=0.18),ADC値は膵頭部で(1.11±0.11)×10−3 mm2/sと(1.24±0.16)×10−3 mm2/s(P<0.05),膵体部で(1.28±0.15)×10−3 mm2/sと(1.20±0.13)×10−3 mm2/s(P=0.19),膵尾部で(1.08±0.11)×10−3 mm2/sと(1.16±0.18)×10−3 mm2/s(P=0.14)であった.また,SS-EPIの撮像時間は298±45 sであった.【結語】膵臓の拡散強調画像を撮像するうえで,SS-EPIと比較しRS-EPIは歪みを低減できるため描出面積が大きく,鮮鋭度,ADC値を担保しながら撮像時間も固定であるため有用な撮像法である.
Purpose: To evaluate the usefulness of readout-segmented echo-planar imaging (RS-EPI) compared with single-shot EPI (SS-EPI) in diffusion-weighted imaging (DWI) of the pancreas. Methods: Fourteen healthy volunteers underwent pancreatic DWI using both SS-EPI and RS-EPI. The depiction area of the pancreas, signal-to-noise ratio (SNR), sharpness, apparent diffusion coefficient (ADC) values, and acquisition time were compared. The depiction area was normalized using half-Fourier acquisition single-shot turbo spin echo (HASTE) images. SNR was calculated using the identical region of interest method, and sharpness was derived from the signal intensity profile. Results: The depiction area was 0.84±0.11 with SS-EPI and 0.97±0.11 with RS-EPI (P<0.05). The SNR values in the pancreatic head were 22.0±11.0 and 12.4±4.2 (P<0.05), in the pancreatic body 19.0±6.9 and 11.1±3.0 (P<0.05), and in the pancreatic tail 19.8±9.0 and 14.7±5.6 (P=0.08), respectively. Sharpness was 0.36±0.11 and 0.33±0.06 in the head (P=0.36), 0.37±0.07 and 0.41±0.11 in the body (P=0.28), and 0.36±0.07 and 0.32±0.08 in the tail (P=0.18), respectively. The ADC values were (1.11±0.11)×10−3 mm2/s and (1.24±0.16)×10−3 mm2/s in the head (P<0.05), (1.28±0.15)×10−3 mm2/s and (1.20±0.13)×10−3 mm2/s in the body (P=0.19), and (1.08±0.11)×10−3 mm2/s and (1.16±0.18)×10−3 mm2/s in the tail (P=0.14), respectively. The acquisition time for SS-EPI was 298±45 s, whereas RS-EPI had a fixed acquisition time. Conclusion: For pancreatic DWI, RS-EPI reduces distortion compared with SS-EPI, resulting in a larger depiction area. While maintaining sharpness and ADC values with a fixed acquisition time, RS-EPI serves as a useful imaging technique.
Magnetic resonance imaging(MRI)検査における拡散強調画像は水分子のランダムな動きを画像化したもので,細胞内外の状態や細胞密度の状態を反映したコントラストが得られる.拡散強調画像は全身のあらゆる部位で撮像されており1–3),膵臓においても膵がんや急性膵炎などの検出に使用されている4, 5).拡散強調画像の撮像法は一般的にsingle-shot echo-planar imaging(SS-EPI)6)が使用されているが,膵臓は胃や十二指腸のガスの影響を受けやすいため歪みが生じ描出不良となることがある.そこで歪みの低減を可能とする撮像法としてreadout-segmented EPI(RS-EPI)があり,readout segmentation of long variable echo-trains(RESOLVE)7)と呼ばれている.RS-EPIはk空間をリードアウト方向にセグメント化したマルチショットEPIであるためecho spaceが短縮され,一つのセグメントにエコーを充填する間の位相分散が小さくなることで歪みの低減を可能とする特徴を有している.
RS-EPIは基礎的あるいは臨床においては頭部や乳房,前立腺などの部位における有用性が多く報告されている8–11).しかしながら,上腹部のような呼吸によって動きを生じる部位の撮像を得意としていない.その理由として,k空間をセグメント化した撮像法であるため,呼吸時相の異なるデータが各セグメントに充填されることにより,位置ずれが生じた画像となってしまうからである.ただし,上腹部領域でも肝臓や腎臓での有用性の報告12–17)は存在しているが,膵臓に関する報告はなされていない.
本研究の目的は,拡散強調画像における膵臓の描出に関してSS-EPIと比較したときのRS-EPIの画質評価を行い,その有用性を検討することである.
MR装置はSiemens社製MAGNETOM Skyra 3.0T XA30(Siemens Healthineers, Erlangen, Germany),コイルはBody Array Coil 18chおよびSpine Coil 32chを使用した.被験者は健常ボランティア14名(男性9名,女性5名,23~42歳,平均30.6歳)であった.ボランティアに対し本研究の趣旨を充分に説明し,書面にて同意を得た.本研究におけるすべての撮像は当院の人を対象とする研究として倫理審査委員会の承認を得た(承認番号220203).
1-2 評価項目膵臓の描出面積,信号雑音比(signal-to-noise ratio: SNR),鮮鋭度,apparent diffusion coefficient(ADC)値,撮像時間を計測した.計測は15年以上のMRIの撮像経験を有する上級磁気共鳴専門技術者1名が行った.また,膵臓は膵頭部,膵体部,膵尾部に区分し,膵頭部は上腸間膜静脈および門脈の左縁より右,膵体部は上腸間膜静脈および門脈の左縁と大動脈の左縁の間,膵尾部は大動脈左縁より左と定義した(Fig. 1).画像解析ソフトはImageJ 1.54f(National Institutes of Health, Bethesda, MD, USA)を使用した.

描出面積に関しては,画像に歪みが生じることで面積変化が起こることが知られているため検討を行った18).SS-EPIとRS-EPIのb値800 s/mm2の画像で各スライスにおいてフリーハンドで膵臓を囲い面積を計測し,総和を算出した19).歪みのない画像として定義したhalf Fourier acquisition single-shot turbo spin echo(HASTE)でも同様に膵臓の面積の総和を算出し,その値で除すことで正規化を行い,平均値と標準偏差を算出した.正規化を行ったのは膵臓の面積は個人差が大きいため,そのばらつきを補正するためである.SNRはSS-EPIとRS-EPIのb値800 s/mm2の画像で膵頭部,膵体部,膵尾部の実質にフリーハンドで100 mm2以上の面積のregion of interest(ROI)を取り(Fig. 1)20),同一関心領域法21)を用いてROI内の平均値を標準偏差で除して,各区分のSNRの平均値と標準偏差を算出した.鮮鋭度に関しては,後述するようにRS-EPIが自由呼吸下での撮像であり,画質低下が懸念されるため評価を行った.SS-EPIとRS-EPIのb値800 s/mm2の画像で膵頭部,膵体部,膵尾部においておおよそ2等分する位置の実質の内外を通るように垂直に信号強度のプロファイルを取り(Fig. 1),式(1)より各区分のsharpness22)の平均値と標準偏差を算出し,膵臓の境界の鮮鋭度を計測した.
![]() | (1) |
ここで,dはプロファイルの最大信号強度と最小信号強度の差の中で20%と80%の信号強度の距離である.ADC値はSS-EPIとRS-EPIのADCマップで膵頭部,膵体部,膵尾部の実質にSNRの計測と同一のROIを取り(Fig. 1)20),各区分のADC値の平均値と標準偏差を算出した.撮像時間は横隔膜同期であるprospective acquisition correction(PACE)を使用したSS-EPIで計測し,平均値と標準偏差を算出した.
1-3 撮像条件SS-EPI,RS-EPIおよびHASTEの撮像条件をTable 1に示す.SS-EPIでは前述したようにPACEを使用したが,これは可能な限り呼吸による体動の影響が小さくなるようにしたためである.更に,呼吸の間隔や呼気量,吸気量はできるだけ一定とするよう事前に説明を行った.一方でRS-EPIは自由呼吸としたが,これはPACEが使用できないためである.そのため加算回数をSS-EPIより大きく設定することで呼吸による体動の影響が小さくなるようにした.特にb値50 s/mm2において大幅に大きく設定したのは,b値が低いほど信号強度が高く,体動の影響が顕著に画像に現れると考えたためである.また,RS-EPIはk空間をセグメント化しているため空間分解能を高く設定できるという利点も活用した.SS-EPIとRS-EPIのコンソール上に表示されている撮像時間はおおよそ同じになるように設定した.HASTEは呼気呼吸停止で撮像した.
| Parameters | SS-EPI | RS-EPI | HASTE |
|---|---|---|---|
| Repetition time (ms) | 4000 | 4750 | 550 |
| Echo time (ms) | 55 | 55 | 72 |
| Slice thickness (mm) | 5 | 5 | 5 |
| Slices | 20 | 20 | 20 |
| Field of view (mm) | 249×340 | 238×340 | 287×340 |
| Matrix | 104×142 | 120×214 | 227×384 |
| Echo space (ms) | 0.6 | 0.4 | 6.0 |
| Bandwidth (Hz/pixel) | 1956 | 1168 | 434 |
| Parallel imaging factor | GRAPPA 2 | GRAPPA 2 | GRAPPA 2 |
| Fat saturation | SPAIR | SPAIR | — |
| Readout segments | — | 3 | — |
| Readout partial Fourier | — | 6/8 | — |
| δ (ms) | 13.3 | 10.6 | — |
| Δ (ms) | 24.2 | 25.2 | — |
| Diffusion time (ms) | 19.8 | 21.7 | — |
| Diffusion mode | 3D diagonal | 3D diagonal | — |
| b-values (s/mm2) | 50, 800 | 50, 800 | — |
| Averages | 6 (b50), 12 (b800) | 14 (b50), 14 (b800) | 1 |
| Scan time (s) | — | 280 | 14 |
δ: motion probing gradient pulse duration, Δ: motion probing gradient pulse spacing, 3D diagonal: three-dimensional diagonal, GRAPPA: generalized autocalibrating partially parallel acquisitions, HASTE: half-Fourier acquisition single-shot turbo spin echo, RS-EPI: readout-segmented echo-planar imaging, SPAIR: spectral attenuated with inversion recovery, SS-EPI: single-shot echo-planar imaging
描出面積および各区分のSNR,鮮鋭度,ADC値はスチューデントのt検定を使用し,有意水準5%にて有意差検定を行った.統計解析ソフトはEZR 1.6123)を使用した.
SS-EPIとRS-EPIでそれぞれ描出面積は0.84±0.11と0.97±0.11(P<0.05)(Fig. 2),SNRは膵頭部で22.0±11.0と12.4±4.2(P<0.05),膵体部で19.0±6.9と11.1±3.0(P<0.05),膵尾部で19.8±9.0と14.7±5.6(P=0.08)(Fig. 3),鮮鋭度は膵頭部で0.36±0.11と0.33±0.06(P=0.36),膵体部で0.37±0.07と0.41±0.11(P=0.28),膵尾部で0.36±0.07と0.32±0.08(P=0.18)(Fig. 4),ADC値は膵頭部で(1.11±0.11)×10−3 mm2/sと(1.24±0.16)×10−3 mm2/s(P<0.05),膵体部で(1.28±0.15)×10−3 mm2/sと(1.20±0.13)×10−3 mm2/s(P=0.19),膵尾部で(1.08±0.11)×10−3 mm2/sと(1.16±0.18)×10−3 mm2/s(P=0.14)(Fig. 5)であった.また,SS-EPIの撮像時間は298±45 sであった.更に,SNRおよびADC値の計測におけるROIの面積はSS-EPIの膵頭部で249.4±77.9 mm2,膵体部で164.8±48.5 mm2,膵尾部で470.5±220.2 mm2,RS-EPIの膵頭部で225.4±48.4 mm2,膵体部で170.9±53.5 mm2,膵尾部で425.9±236.5 mm2であった.




Figure 6にRS-EPIの画像を示す.Figure 7にRS-EPIにより歪みが改善されている画像を示す.


本研究は膵臓の拡散強調画像を撮像するうえでSS-EPIとRS-EPIを使用し,描出面積および各区分でのSNR,鮮鋭度,ADC値と撮像時間を評価し,比較検討を行った.
描出面積はSS-EPIよりRS-EPIの方が高値であった.これは消化管のガスが磁化率の影響により変位し,信号欠損やパイルアップアーチファクトにより膵臓の描出に影響を与えたと考える24).SS-EPIと比較しRS-EPIでは歪みを低減することができるため,ガスの変位量が小さくなり膵臓の描出範囲が広くなったと考える25).歪みに寄与するパラメータは今回の撮像条件より周波数マトリクス数,受信バンド幅,echo spaceがあるが,周波数マトリクス数,受信バンド幅はecho spaceに関与するパラメータである26).そのため,RS-EPIのecho spaceが短縮されていることが歪みの低減に最も寄与していると考える.SNRはSS-EPIよりRS-EPIの方が低値であり,膵頭部と膵体部で有意差が認められた.これはマトリックスサイズの違いが一番の要因であると考える.RS-EPIはk空間をセグメント化しているため,位相エンコード数を増加しても位相分散が大きくならず高空間分解能化しやすいという利点を本検討では活用したためである.SS-EPIとRS-EPIでシーケンスが異なるため撮像条件の完全な一致は難しいが,ある程度条件を同一とした場合はRS-EPIの方がSNRが上昇することが予想される.これはセグメント数が大きいほど位相分散の低下により高い信号強度が得られ,SNRが上昇することが知られているためである25).また,膵頭部と膵体部は胃や十二指腸が近接することが多く,歪みによりSNRに影響を与えたと考える.鮮鋭度はSS-EPIとRS-EPIで区分にかかわらず有意差は認められなかった.RS-EPIは自由呼吸のため体動によりモーションアーチファクトが生じてしまうが,加算回数を大きく設定したため鮮鋭度が向上したと考える.また,体動は腹部全体に生じるため,膵臓の区分による有意差はなかったと考える.今回使用したthree-dimensional diagonal(3D diagonal)はmotion probing gradient(MPG)の印加軸数が1軸であり拡散異方性の影響を受けるが,その影響を受けにくい腹部で使用できることが知られている27).1軸のMPGでの撮像は加算回数の設定による撮像時間の調整が容易となる.また,描出面積に関してはモーションアーチファクトにより面積が大きくなったことも懸念されるが,鮮鋭度の結果よりモーションアーチファクトによる影響よりも歪み低減による効果が大きいと考える.ADC値はSS-EPIとRS-EPIで膵頭部のみ有意差が認められ,RS-EPIの方が高値となった.また,両撮像法とも膵尾部で低値となった.前述したように膵頭部は消化管に近接しており,ガスによる歪みがADC値に影響を与えた可能性がある.膵尾部では細胞構成に違いがみられ,ランゲルハンス島の増加によりADC値が低下することが知られており,本検討も同様の結果となった28).両撮像法とも先行研究28)の正常な膵臓のADC値の範囲に入っており,これは拡散時間に大きな差がなかったことやRS-EPIの加算回数の増加がSNRを担保し,特にb値50 s/mm2の加算回数を大幅に増加させたことで呼吸による体動の影響を抑えられ,ADC値の安定性につながったことが理由と考える.撮像時間はRS-EPIが280秒の固定であるのに対し,SS-EPIの方が平均撮像時間は長く,ばらつきも大きい結果となった.自由呼吸により撮像時間が決まっているRS-EPIは検査時間の観点からも有用であると考える.
総じてRS-EPIは歪み低減による描出範囲の拡大やSNRを担保しつつ高空間分解能に撮像でき,ADC値で評価される病変の描出に対する有用性があると考えられる.
本研究のリミテーションとして,サンプル数が少なく,正常な若年のボランティアを対象としており,高齢患者や膵がんなどの病的状態の患者は含まれていない.評価項目の測定は1名で行ったため,誤差が生じている可能性がる.また,RS-EPIでは自由呼吸のためモーションアーチファクトの影響を完全に抑制することはできない.しかしながら,腹部をバンドで固定することで呼吸による体動を低減できることが知られており,本検討よりもアーチファクトを低減した画像を得ることができると考える29, 30).更に,RS-EPIのセグメント数の設定に関しての検討はできていない.しかしながら,セグメント数を大きくすると一つのk空間に呼吸時相の異なるデータが充填される回数が増えるため画質は劣化すると考える.そのため,今回はセグメント数を最小の3とし,加えてreadout partial Fourierを設定することでデータの充填される回数を減少させ,画質の劣化に対する対策を行った.
膵臓の拡散強調画像を撮像するうえで,SS-EPIと比較しRS-EPIは歪みを低減できるため描出面積が大きく,鮮鋭度,ADC値を担保しながら撮像時間も固定であるため有用な撮像法である.
本研究にご協力いただきました岡山済生会総合病院放射線技術科の皆様に厚く御礼申し上げます.
なお,本研究の要旨は第51回日本放射線技術学会秋季学術大会(2023年10月,名古屋)および第19回中四国放射線医療技術フォーラム(2023年11月,山口)にて発表した.
本研究は助成を受けていない.
筆頭著者および共著者全員に開示すべき利益相反はない.