2026 年 82 巻 8 号 論文ID: 26-1663
【目的】一般撮影における待ち時間の特性をデータ解析により明らかにし,離散事象シミュレーションを用いて業務改善の有効性を定量的に検討する.【方法】一般撮影を対象とし,放射線情報システムから取得した受付時刻および撮影開始時刻より待ち時間を算出した.待ち時間の曜日別分布特性を可視化し,機械学習手法により影響因子を解析した.更に,患者到着間隔,撮影時間,技師数および撮影室数を条件とした離散事象シミュレーション(discrete event simulation: DES)を構築し,運用条件の変化が待ち時間に及ぼす影響を評価した.【結果】待ち時間は曜日により有意な差を認めた.影響因子解析では,検査内容および実施者因子が待ち時間に強く関与した.シミュレーションでは,技師増員のみでは待ち時間短縮効果が限定的な条件が存在し,過剰な増員によりスタッフ効率の低下が示された.また,繁忙日および通常日に応じた技師数の最適化を行った.【結語】一般撮影の待ち時間短縮には,人的資源の増減だけでなく,業務特性を考慮した運用改善が重要である.データ解析とDESは,待ち時間対策を定量的に検討する有効な手法である.
Purpose: This study aimed to visualize patient waiting times in general radiography using a data-driven approach and to evaluate operational strategies for congestion mitigation in a high-volume clinical setting. Methods: General radiography examination data collected over a 3-year period were retrospectively analyzed. Waiting time was defined as the interval between patient reception and examination start. The overall distribution and characteristics of waiting times were evaluated using inverse cumulative distribution analysis. Factors influencing waiting time were assessed using random forest regression, incorporating examination-related and operational variables. Based on the identified key factors, a discrete-event simulation model was constructed to evaluate the effects of different operational conditions, including staffing levels, on patient waiting time. Results: Inverse cumulative distribution analysis revealed substantial variability in waiting time across examinations. Random forest analysis identified examination type, imaging region, and operator as major contributing factors to waiting time. Discrete-event simulation demonstrated that increasing staffing levels effectively reduced waiting time; however, the magnitude of improvement diminished beyond a certain staffing threshold, indicating limited returns from simple workforce expansion. Conclusion: Data-driven visualization and machine learning–based analysis are effective for understanding waiting time characteristics in general radiography. The findings suggest that congestion mitigation cannot be achieved solely through staffing increases and requires optimized workflow design and operational planning based on empirical data.
一般撮影における待ち時間は,大病院において長い傾向1)があり,患者満足度や医療サービスの質に影響を及ぼす重要な要因である2).国内の意識調査や受療行動調査においても,医療に対する不満理由として継続的に挙げられている1, 3–5).一般撮影は一日当たりの実施件数が多く,待ち時間の増加は患者のみならず,業務負担や部門運営にも影響を及ぼすため,臨床現場における重要な課題である2, 5).これまでの待ち時間に関する研究では,患者満足度調査や平均待ち時間を指標とした解析が多かった6).一方で,これらの多くは静的指標や主観的評価に基づくものであり,待ち時間の分布特性や運用条件の変化による改善効果を定量的かつ動的に評価することは十分ではなかった.
待ち時間の分布を記述統計で評価すると,平均値や中央値のみでは実態を十分に把握できない可能性があり,長時間待機の評価を可能とする分布指標が求められる.また,待ち時間には曜日,時間帯,検査内容,人員配置条件など複数の要因が関与すると考えられるが,従来研究ではこれらを多因子的に解析した報告は限られている.本研究では,ランダムフォレスト回帰分析を用いて待ち時間の影響因子を解析7)し,更に離散事象シミュレーションにより人員配置条件の変化が待ち時間に及ぼす影響を評価8, 9)した.
本研究の目的は,一般撮影における待ち時間を実測データに基づいて可視化し,分布特性および影響因子を明らかにするとともに,人的要因の変化が待ち時間に及ぼす影響を動的に評価することで,一般撮影部門における業務運用改善に資する知見を得ることである.
本研究は,一般撮影を医師よりオーダーされた患者を対象とした単施設における後ろ向き観察研究である.研究対象期間は2021年4月から2024年3月までとし,放射線情報システムに実施記録がある日勤帯(8:30–17:15)のデータを用いた.待ち時間60分以上の症例は,患者の一時的不在や他検査・診察・処置による待機中断など,一般撮影部門の通常運用を直接反映しない事例が含まれる可能性があるため,主要解析から除外した.除外症例は271件であり,全219433件中0.12%であった.取得した項目は,受付時刻,検査開始時刻,検査終了時刻,検査実施日,時間帯,診療科,患者年齢,受診区分,検査内容,検査を担当した診療放射線技師(以下,実施者)とした.
1-2 待ち時間の定義および記述統計解析待ち時間は,受付時刻から検査開始時刻までの時間として定義した.曜日ごとの平均値,中央値,四分位範囲を算出し,箱ひげ図を作成した.また,待ち時間が一定時間以上となる患者の割合を視覚的にも評価する目的で,逆累積分布を作成した.横軸を待ち時間,縦軸を検査開始に至っていない患者の割合として算出した.
1-3 待ち時間影響因子の解析(ランダムフォレスト回帰分析)待ち時間に影響を及ぼす要因を解析するため,ランダムフォレスト回帰分析を行った.目的変数は待ち時間(受付~検査開始)とし,説明変数には曜日,時間帯,検査内容,実施者,技師人数などを用いた.カテゴリ変数はlabel encodingにより数値化した.なお,本研究で用いたランダムフォレストは決定木ベースのアルゴリズムであるため,ラベルの順序性が結果に与える影響は小さいと判断した.データは学習用80%,検証用20%に分割し(random state=42),ランダムフォレスト回帰モデル(n estimators=100, max depth=None, min samples split=2, min samples leaf=1)を用いて学習を行った.モデルの汎化性能は決定係数(R2)および平均絶対誤差(MAE)により評価し,各説明変数の影響度はランダムフォレストにおける特徴量重要度(feature importance)により算出した.
1-4 離散事象シミュレーションによる待ち時間評価一般撮影部門における業務フローを再現した離散事象シミュレーションモデルを構築した.繁忙日は午前中(8:30–12:00)の210分間に約120名,通常日は約100名の患者到着を想定した.患者到着は平均到着間隔に基づく分布として設定し,繁忙日は約1.75分間隔,通常日は約2.1分間隔とした.撮影時間は平均5分,標準偏差2分の正規分布として設定した.撮影室数は3室で固定し,技師人数を主要なパラメータとして変化させ,人員配置条件の違いが待ち時間に与える影響を評価した.
1-5 解析環境データ解析およびシミュレーションは,ネットワークに接続していないローカル環境のPC上で実行した.解析にはPython(Version 3.11.12)を用い,ランダムフォレスト回帰分析にはscikit-learnライブラリを,DESにはSimPyライブラリを使用した.
1-6 倫理的配慮鹿児島大学桜ヶ丘地区臨床研究倫理委員会の承認を得て実施した(整理番号:240134疫,承認日:2024年10月3日).本研究は診療情報を用いた後ろ向き研究であり,解析にあたっては個人を特定できる情報をすべて匿名化した.
研究対象とした一般撮影の検査オーダーは219433件であった.平均年齢は58.9±22.1歳で,65歳以上は53.3%を占めていた.概要および曜日別分布をTable 1に示す.
| Category | Item | N | Proportion (%) |
|---|---|---|---|
| Age Statistics | Mean age±SD | 58.9±22.1 | — |
| Age Category | Aged ≥65 years | 116921 | 53.3 |
| Sex | Male | 114950 | 52.4 |
| Female | 104482 | 47.6 | |
| Other | 1 | <0.1 | |
| Visit Type | Outpatient | 135100 | 61.6 |
| Inpatient | 79502 | 36.2 | |
| Outpatient (during hospitalization) | 4831 | 2.2 | |
| Visits | Monday | 59512 | 27.1 |
| Tuesday | 39963 | 18.2 | |
| Wednesday | 56411 | 25.7 | |
| Thursday | 35023 | 16.0 | |
| Friday | 28524 | 13.0 |
一般撮影における待ち時間の分布をFig. 1に示す.待ち時間の箱ひげ図による評価では,多くの検査オーダーにおいて待ち時間は短かった一方,長時間待機する検査オーダーが一定数認められた.曜日間で待ち時間の有意差が認められ(Kruskal–Wallis test: p<0.01),特に水曜日では,待ち時間のstandard deviation(SD)が大きく,長時間待機する患者が多く認められた(Table 2).待ち時間の分布特性をより詳細に評価するため,待ち時間の逆累積分布を(Fig. 2)に示す.逆累積分布でも,待ち時間の傾向が曜日ごとに異なることが示された.

| Mon | Tue | Wed | Thu | Fri | |
|---|---|---|---|---|---|
| N | 59512 | 39963 | 56411 | 35023 | 28524 |
| Mean [min] | 3.9 | 1.8 | 6.4 | 1.4 | 1.3 |
| Median [min] | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 |
| SD [min] | 8.8 | 4.4 | 10.2 | 4.7 | 5 |
| IQR(25%–75%)[min] | 0.0–5.0 | 0.0–2.0 | 0.0–9.0 | 0.0–2.0 | 0.0–1.0 |

待ち時間に影響を及ぼす要因を明らかにするため,ランダムフォレスト回帰分析を行い,各説明変数の相対的重要度を算出した(Fig. 3).待ち時間に対する影響因子として,曜日,時間帯,検査内容,実施者,技師人数などが抽出された.これらの要因は,待ち時間に対して異なる影響度を示し,要因ごとに相対的重要度に差が認められた.特に,検査内容および実施者が影響因子として抽出された.また,本モデルの予測性能はR2=0.49,MAE=3.0分であった.

離散事象シミュレーションを用いて,技師人数の違いが待ち時間に与える影響を評価した.繁忙日のシミュレーション結果をFig. 4に,通常日の結果をFig. 5に示す.技師人数を増加させると,繁忙日,通常日いずれの条件においても待ち時間は短縮する傾向を示した.一方で,技師人数を一定数以上に増加させた条件では,待ち時間短縮効果は次第に小さくなるとともにスタッフ効率は低下した.また,繁忙日では技師4名で待ち時間の大幅な短縮が認められ,それ以上の増員による改善効果は小さかった.一方,通常日では技師3名で待ち時間はほぼ解消され,それ以上の増員による効果は限定的であった.

The left y-axis represents waiting time and overtime duration (min), whereas the right y-axis represents staff efficiency and room utilization efficiency (%).

The left y-axis represents waiting time and overtime duration (min), whereas the right y-axis represents staff efficiency and room utilization efficiency (%).
本研究では,一般撮影における待ち時間の分布を箱ひげ図および逆累積分布を用いて評価した.その結果,待ち時間は多くの検査オーダーで短時間に収束する一方,長時間待機となる検査オーダーが一定数存在するという分布特性を示した.このような分布では,平均値や中央値のみでは長時間待機となる検査オーダーの実態が十分に反映されない可能性があるため,逆累積分布を用いた.待ちが発生している患者の割合を視覚的に把握でき,長時間待機患者の評価に有用であると考えた.一般撮影の待ち時間対策においては,長時間待機となる検査オーダーをいかに減少させるかが重要であり,本研究で用いた評価手法は,臨床現場における運用改善の検討に有効な情報を提供するものと考えられる.
3-2 待ち時間影響因子に関する考察ランダムフォレスト回帰分析の結果,待ち時間には検査内容,実施者,曜日,時間帯等複数の要因が関与していることが示された.これらの要因は単独で待ち時間を規定するものではなく,複雑に相互作用しながら影響を及ぼしていると考えられる.特に,検査内容および実施者で高い重要度を示していたことは,一般撮影において撮影手技や業務の進め方といった要素が待ち時間に影響を与えている可能性を示す結果であると考える.また,本研究におけるランダムフォレスト回帰モデルの予測性能はR2=0.49,MAE=3.0分であった.MAEが3分であることは,外来における一般撮影の待ち時間のばらつきを考慮すると,臨床的に許容可能な精度と考えられる.特に,待ち時間の増加傾向や混雑状態の把握といった運用支援の観点から有用であると考えられる.R2が0.49であったことは,待ち時間の変動の約半分を本モデルで説明可能であることを示しており,検査内容,実施者などの要因が待ち時間に一定の影響を与えていることが示唆される.残りの変動については,患者の一時離席や検査優先順位の変更,検査内容の確認による延長を含めた突発的な検査時間延長など,本研究で扱っていない非定常要因の影響が考えられる.したがって,本モデルは待ち時間の傾向把握や業務負荷評価に基づく運用改善に有用であると考えられる.
一方,本研究では,ランダムフォレスト解析において実施者が重要因子として抽出されたことから,診療放射線技師個人の経験や撮影手技,業務遂行能力の差異が待ち時間に影響している可能性が示唆された.しかし,本研究の離散事象シミュレーションでは,各技師の処理能力を一律条件として設定しており,個人差までは反映していない.そのため,本シミュレーション結果は「平均的な運用条件」に基づく評価であり,実際の臨床現場においては,技師ごとの習熟度や役割分担により待ち時間短縮効果が変化する可能性がある.
更に,本研究では平均値予測などの単純なベースラインモデルとの比較は実施していない.そのため,本モデルがどの程度予測性能を向上させたかについては十分に評価できていない可能性がある.今後は,線形回帰モデルや平均値予測モデルなどとの比較を行い,モデル性能の妥当性を更に検証する必要があると考えられる.
3-3 離散事象シミュレーションによる人員配置評価の意義技師人数の増加に伴い待ち時間は短縮したが,その効果は人数増加に比例して持続するものではなく,一定数以上では改善幅は小さくなった.本シミュレーションでは撮影室数を3室に固定し,技師増員時は各撮影室間で患者誘導,ポジショニング補助,次患者準備などを分担する協働作業により,検査間の準備時間および実効的な処理時間が短縮されるモデルとして設定した.その結果,人員配置の最適化を検討したところ,繁忙日では技師4名,通常日では技師3名において待ち時間短縮とスタッフ効率のバランスが最も良好であった.このことから,患者負荷に応じた人員配置の最適化が重要であり,単純な増員のみでは効率的な運用改善につながらない可能性が示された.一般撮影部門では限られた人的資源の中で効率的な運用が求められるため,人員数の調整に加え,撮影補助や次患者準備などの役割分担を含めた配置変更が必要と考えられる.また,本研究の結果は,繁忙日と通常日で異なる人員配置を行うことの有用性を示すものである.特に繁忙日においては,撮影補助や患者誘導を担当する技師の配置により,実効的な処理能力が向上する可能性があり,単純な人数増加だけでなく,役割分担や熟練技師の配置が待ち時間改善に寄与することが考えられる.今後は,技師ごとの撮影時間分布や経験年数を考慮したシミュレーションモデルの構築が課題である.
3-4 本研究の限界と今後の課題本研究は単施設における後ろ向き観察研究であり,施設特有の運用や患者背景の影響を受けている可能性がある.また,解析単位を検査オーダー単位としたため,同一患者による複数回受診の影響は考慮していない.更に,実施者に関する解析では,技師の経験年数や専門性などの詳細な背景因子は考慮していない.本研究は撮影室3室の運用を前提とした結果であり,撮影室数や機器構成,業務分担が異なる施設では最適な人員配置は変化する可能性がある.更に,曜日,時間帯,検査内容,実施者,技師人数などを対象として解析を行ったが,単位時間当たりの検査依頼数,検査難易度,患者の年齢や移動能力などの詳細な要因までは考慮していない.検査数の増加による影響と,1検査当たりの処理時間の延長による影響では対策が異なる可能性があり,今後はこれらの要因を含めた解析が必要と考えられる.また,待ち時間が60分以上の検査オーダーを除外して解析を行った.これらには,他検査や診察による待機中断,一時的不在など,一般撮影部門の通常運用を直接反映しない要因が含まれる可能性があるため除外対象とした.除外症例は271件であり,全解析対象219433件中0.12%であったことから,全体解析結果への影響は限定的であると考えられる.一方で,長時間待機症例は臨床的に重要な事象であり,今後は除外基準の違いによる感度解析を行い,本モデルの頑健性を更に検証する必要があると考えられる.また,本研究で用いた待ち時間解析および離散事象シミュレーションの手法は,他施設においても応用可能であると考えられる.ただし,撮影環境は施設ごとに異なるため,適用にあたっては各施設における受付時刻,検査開始時刻,検査内容,実施者情報などの実測データを用いたパラメータ設定が必要である.特に,到着患者数の分布,検査時間分布,繁忙時間帯の特徴などを施設ごとに反映することで,より実態に即したシミュレーション評価が可能になると考えられる.
3-5 臨床的意義本研究は,一般撮影における待ち時間を分布として可視化し,その影響因子を多面的に解析するとともに,離散事象シミュレーションを用いて運用改善の可能性を検討した点に特徴がある.これらの結果は,待ち時間対策を「増員か我慢か」という二者択一ではなく,現場データに基づいて検討可能な課題として捉える視点を提供するものであり,一般撮影部門における業務改善に資する知見と考えられる.
本研究では,一般撮影における待ち時間を実測データに基づいて可視化し,影響因子の解析および離散事象シミュレーションによる運用評価を行った.その結果,ランダムフォレスト解析では検査内容,実施者が他の因子と比較して高い重要度を示す主要因として抽出され,長時間待機となる検査オーダーが一定数存在する分布特性が明らかとなった.また,離散事象シミュレーションにより,当院の環境では繁忙日では技師4名,通常日では技師3名において待ち時間短縮とスタッフ効率のバランスが最も良好であり,単純な増員では待ち時間短縮効果が限定的となることが示された.これらの知見は,一般撮影における待ち時間対策を定量的に評価可能であることを示すとともに,業務特性および患者負荷に応じた柔軟な人員配置の最適化が重要であることを示すものであり,実測データに基づく運用改善の有用性を示すものである.
本研究は日本放射線技術学会九州支部の助成を受けた(第25015号).
筆頭著者および共著者全員に開示すべき利益相反はない.