論文ID: 2022-1146
安定冠動脈疾患に対する経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)は,ガイドラインにより,術前の検査で機能的虚血の存在が示されていることが算定要件となり,機能的虚血評価の重要性が強調されている.そのため,心臓カテーテル検査(coronary angiography: CAG)にて冠血流予備能比(fractional flow reserve: FFR)や瞬時血流予備能比(instantaneous wave-free ratio: iFR)を測定し,PCIの適応を判断している.また,冠動脈コンピュータ断層撮影(coronary artery computed tomography: CACT)より得られるFFR-CTも保険償還され,非侵襲的な虚血評価が注目されている.本研究では,軽,中等度狭窄と診断された患者のCACTデータを使用し,Ziostation2にて冠動脈支配領域解析を行い,得られた狭窄病変部以遠の左室心筋体積の左室心筋全体に対する割合(虚血左室心筋体積割合)と,CAG施行時に測定されたFFRを対比することで,CACTデータから機能的虚血情報を推定することが可能であるか検討した.結果として,虚血左室心筋体積割合はFFRと相関を示した(r=−0.57).また,FFR≤0.79のPCI群とFFR≥0.80の非PCI群において,虚血左室心筋体積割合を比較すると,PCI群のほうが有意に高値であった.FFRのカットオフ値を0.80とした場合,冠動脈支配領域解析における虚血左室心筋体積割合のカットオフ値は,ROC解析より30%であり,感度90.9%,特異度77.3%であった.これは,中等度狭窄病変遠位が支配する心筋体積が左室心筋体積全体の30%を上回る場合に虚血の可能性があると判断でき,30%未満では虚血の可能性は低いと判断できることを示し,CACTデータ解析が機能的虚血の診断の一助となる可能性が示唆された.