日本臨床外科学会雑誌
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症例
試験開腹後に腸間膜脂肪織炎と門脈ガス血症を発症した1例
菊池 正二郎宮下 篤史生駒 久視落合 登志哉園山 輝久山岸 久一
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2007 年 68 巻 3 号 p. 640-644

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抄録

症例は76歳, 男性. 検診でCA19-9高値 (486.6U/ml) を指摘されて当院を受診した. 腹部造影CT検査で腹部傍大動脈領域に8×3cmの腫瘤を認め, 上・下部消化管内視鏡・MRI・FDG-PETも行ったが, 原発巣となりうる病変を同定することはできなかった. 病理組織診断のために試験開腹を行い, 診断は高度の線維化を伴う膵外発育型膵癌であった. 7病日目に突然の腹痛・39度台の発熱とともに敗血症性ショックとなり, 腹部造影CT検査を行ったところ, 腸間膜脂肪織炎, 横行結腸壁肥厚および腸間膜静脈・門脈ガス血症を認めた. 発症後8時間で緊急開腹手術を行い, 横行結腸切除術・上行結腸人工肛門造設術を行った. 術後は急速に敗血症を離脱して, 軽快退院した. 腸間膜脂肪織炎による門脈ガス血症の報告はこれまでにないが, 早期の診断と迅速な原因の除去によって軽快することを示した.

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© 2007 日本臨床外科学会
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