日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
脾摘・肝切除後の門脈血栓症に対し血栓溶解療法が著効した1例
猪瀬 悟史塩澤 俊一土屋 玲金 達浩成高 義彦小川 健治
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 68 巻 3 号 p. 645-648

詳細
抄録

症例は71歳, 女性. C型肝硬変合併肝腫瘍 (S8), 脾腫による汎血球減少症の診断でS8部分切除・脾摘術を施行した. 第8病日に39℃台の発熱, 下痢がみられたが対症療法で軽快した. しかし第30病日に再び39℃台の発熱, 腹痛が出現し, 腹部CT検査で脾静脈から門脈左右枝におよぶ広範な血栓形成を認めた. ウロキナーゼ (24万単位/日), ヘパリン (5,000単位/日) 静脈内投与による血栓溶解療法を開始し, 第37病日の腹部CT検査で血栓の縮小がみられたため, 以後ワーファリン (2mg/日) 内服による抗凝固療法に変更した. 第69病日の腹部CT検査では血栓は完全に消失し, 第72病日に退院した. 術後113日目の腹部CT検査でも再発はなく, ワーファリンを減量したのち中止した. 脾摘後の門脈血栓症は比較的頻度の高い合併症であるが, 脾摘と肝切除の同時施行での発症例は自験例を含め3例であった. 術後に原因不明の発熱や腹痛などが続いた場合は本病態も考慮し, 腹部超音波検査や腹部CT検査を適宜施行することが重要である.

著者関連情報
© 2007 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top