日本臨床外科学会雑誌
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症例
6年間経過観察中に肝嚢胞が癌化したと考えられる肝嚢胞性腫瘍の1例
宇高 徹総脇 直久久保 雅俊水田 稔白川 和豊宮谷 克也
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キーワード: 肝嚢胞性腫瘍, 肝嚢胞, 癌化
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2007 年 68 巻 3 号 p. 654-658

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抄録

肝尾状葉の単純性嚢胞で6年間の経過観察中に肝嚢胞が癌化したと考えられる肝嚢胞性腫瘍の1例を経験したので報告する. 症例は76歳, 男性. 1996年より肝嚢胞を近医で経過観察中, 2003年1月腹部CTで嚢胞内に隆起性病変を認められ当科に紹介となった. 腹部CTで肝尾状葉に4.5cm大の嚢胞性病変の内部に充実性部分を認めた. ERCPでは肝左葉内の胆管と嚢胞との間に交通を認めた. 超音波ガイド下の嚢胞の穿刺細胞診ではclass Vであった. 肝嚢胞の癌化の診断で拡大肝左葉切除, 尾状葉切除を行った. 摘出標本では5.2cm大の嚢胞性病変の内部に2cm大の充実性腫瘍を認めた. 病理組織検査では嚢胞壁には異型高円柱上皮が乳頭状に増生しており, 充実成分は高分化腺癌であった. 術後3年1カ月の現在, 多発肝転移, 大動脈周囲リンパ節転移を認めるが生存中である. 単純性肝嚢胞を経過観察する場合, 肝嚢胞が癌化する可能性を念頭に置き, 腹部超音波, 腹部CTなどにより嚢胞の形態変化を早期に発見することが重要と思われた.

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© 2007 日本臨床外科学会
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