2007 年 68 巻 3 号 p. 649-653
症例は58歳, 女性. 2006年5月に右下腹部痛を主訴に紹介来院した. 腹部超音波, CT, DIC-CTで, 肝S6から肝外に発育した径7cmの嚢胞性腫瘤を指摘された. 嚢胞壁は薄く, 単房性で, 単純性嚢胞の可能性があったが, 有症状であったこと, 肝嚢胞腺腫が否定できなかったことから, 腹腔鏡下に手術を施行し, 完全切除した. 病理組織学的には嚢胞壁は立方円柱上皮からなる肝嚢胞腺腫であった. 一般的に, 肝嚢胞腺腫か腺癌かを術前に診断するのは難しい. また腺腫から癌への移行もあり, 肝嚢胞腺腫自体は良性腫瘍であるが, 悪性腫瘍に準じた完全切除が必要となる. 腹腔鏡下手術は嚢胞の破裂の危険性があり適応は慎重であるべきであり, 本邦での施行例は現在まで極めて稀である. しかし肝外発育型で肝切除の容易なもの, 大きさの小さいものに対しては適応になると思われる. 自験例は鏡視下手術の良い適応であったと思われ, 若干の文献的考察を加え報告する.