2007 年 68 巻 3 号 p. 706-709
症例は86歳, 女性で腹痛嘔吐を主訴に当院紹介となった. 前医にて肺炎で入院中CTにて閉鎖孔ヘルニアとして手術目的に当院紹介となった. 入院時検査では炎症所見を認めず, まずはイレウスチューブ挿入にて経過観察を行っていたが改善せず, 手術を施行したところ内膀胱上窩ヘルニアの嵌頓を認めたため, 小腸部分切除術を施行しヘルニア門は縫合閉鎖した. 内膀胱上窩ヘルニアは稀な疾患であり, 文献検索からは過去に国内で報告された内膀胱上窩ヘルニアは14例に過ぎず本症例が15例目に当たる. 術前正診例の報告は国内ではまだない. 症状や画像所見は他のヘルニアに酷似することがあり, また合併することも多い. 内膀胱上窩ヘルニアは高齢者の腸閉塞の原因としては少ないながらも重要な疾患と考えられる. 嵌頓が遷延したにもかかわらず壊死所見を認めず待機的手術となった内膀胱上窩ヘルニアは極めて稀な症例と考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告する.