2007 年 68 巻 3 号 p. 715-719
症例は69歳, 男性. 平成15年8月, 腹部膨満感を主訴に近医受診し腹部巨大腫瘍を指摘され, 精査加療目的にて当院紹介となった. CT・MRIで, 網嚢付近を主座とし, 内部は不均一で索状構造を有し, 腹腔内臓器を著明に圧排する巨大腫瘍が認められた. これに対し腫瘍摘出術施行. 腫瘍は左横隔膜下から骨盤腔に至り, 上腹部で胃・脾および肝を圧排, 下腹部で横行結腸および横行結腸間膜を圧排していた. 胃小彎との癒着が強固で, 同部が原発と考えられた. 標本は重量10.2kg, 脂肪様・ゼリー状・壊死状など様々な様相を呈していた. 病理組織学的には高分化型脂肪肉腫であった. 今回, 10kgを越える腹部巨大脂肪肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.