日本臨床外科学会雑誌
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症例
巨大後腹膜脂肪肉腫に伴い消失した肝嚢胞の1例
藤島 則明開発 展之浜口 伸正谷田 信行大西 一久原 真也
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2007 年 68 巻 3 号 p. 725-729

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抄録

後腹膜脂肪肉腫は比較的稀な疾患である. 今回, われわれは巨大な後腹膜脂肪肉腫に伴い肝嚢胞が消失した1例を経験したので報告する. 症例は71歳, 女性. 上腹部膨満感, 食欲不振を訴え来院した. 来院時, 腹部全体を占める硬い大きな腫瘤を触知し, 軽度の圧痛を伴っていた. 腹部CT, MRIでは左上腹部から下腹部にかけ隔壁を有する大きな腫瘤を認めた. 6年前指摘されていた肝嚢胞は消失していた. 平成17年5月27日, 腫瘤摘出術を行った. 左上腹部を中心に後腹膜より発生した腫瘍で分葉状を呈し各臓器は極度に圧排されていた. 大きさ32×30×14cmで重量6.4kgであった. 病理組織検査では脂肪肉腫, 粘液型, 一部脱分極型と診断された. 腹部の巨大な腫瘍により肝嚢胞内の圧が上昇し内皮の虚血, 壊死が生じ肝嚢胞が消失したと推測される稀な症例と考えられた.

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© 2007 日本臨床外科学会
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