抄録
症例は72歳, 男性. 若年より痔瘻, 痔核の既往があった. 平成15年頃より肛門部からの排膿を認めたが, 疼痛がないため放置していた. 平成17年3月, 疼痛を自覚するようになり近医受診. 肛門周囲膿瘍 (痔瘻) の診断にて当科紹介となった. 受診時現象では3時方向の痔瘻二次口から粘液分泌があり, 5時方向の肛門皮膚には2型腫瘤を認めた. 生検および分泌細胞診にて粘液癌が検出され, 痔瘻癌の疑いにて腹会陰式直腸切断術を施行した. 病理標本所見では痔瘻の原発口, 二次口を交通する粘液プールが存在し, そのなかを浮遊するsignet ring cellや異型細胞を認めた. 痔瘻に一致して腫瘍細胞が存在し, 痔瘻癌と診断した.
痔瘻癌は早期発見が困難な疾患であり, 進行した状態で発見されることが多い. 進行癌においてもその診断は容易ではない. 症状の変化やコロイド分泌などみられたときには積極的に痔瘻癌を疑い精査する必要がある.