日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹腔鏡下胆嚢摘出術後,肝膿瘍をきたした1例
三橋 登吉富 秀幸木村 文夫清水 宏明吉留 博之宮崎 勝
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 1 号 p. 145-150

詳細
抄録

腹腔鏡下胆嚢摘出術の合併症として肝膿瘍の報告は殆ど無い.今回われわれは腹腔鏡下胆嚢摘出術後,一時的肝動脈血流障害によると思われる肝膿瘍をきたした1例を経験したので報告する.症例は74歳,男性.主訴は右季肋部痛.数回の右季肋部痛発作を繰り返し当科受診.諸検査にて胆嚢結石・胆嚢炎と糖尿病,脂肪肝を認めた.胆嚢結石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.術後発熱と軽度肝障害が遷延したものの自然に軽快し,術後10日目に退院となった.術後24日目に腹痛を認め当科受診,超音波検査・CTより肝前区域膿瘍の診断となる.肝動脈,門脈の血流は良好,胆管拡張は認めなかった.炎症反応は軽度であり,外来にて抗生剤の内服を開始.以後症状は軽快し術後46日目のCTで膿瘍は著明に縮小した.本症例では,肝動脈右前区域枝の一時的血流障害により肝膿瘍が発生したと考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top