日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
原著
内視鏡下乳房温存手術の長期成績
中嶋 啓雄藤原 郁也水田 成彦阪口 晃一鉢嶺 泰司中務 克彦市田 美保大橋 まひろ
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 10 号 p. 2454-2461

詳細
抄録
背景:乳癌に対するVideo-assisted breast conserving surgery(VA-BCS)は,日本において開発され,発展してきた術式である.皮膚浸潤のない乳癌に対して,目立ちにくい場所に皮膚切開創を置き,内視鏡下にskin sparing partial mastectomy(SSPM)を行うことで,高い整容性が得られる手術法である.われわれはその長期成績について報告する.
対象と方法:皮膚浸潤のない乳癌をVA-BCSの適応とする.皮膚切開部位は,傍乳輪または中腋窩線とする.乳腺の剥離は,内視鏡下の皮下トンネル法と吊り上げ法で行い,SSPMを行う.乳腺の欠損部位は,必要に応じて自家組織による乳房再建を付加する.1999年11月~2003年3月までに142例(StageI:56,StageII:86)に,VA-BCSを行い,その術後合併症・morbidity・予後・手術後の患者満足度について検討した.
結果:術後合併症として,皮膚壊死が6例(4.2%)と脂肪・筋肉フラップ壊死が5例(3.5%)にみられたが,重篤な合併症は無かった.平均観察期間70.0カ月で,局所再発は7例(4.9%)にみられた.60カ月でのdistant metastasis-free survival rate(DMFS)は,StageI:92.7%,StageII:90.7%であった.また,overall survival rate(OS)はStageI:94.5%,StageII:97.4%であった.患者への手術に対する満足度のアンケートでは,71.7%の患者が満足と回答した.
結論:VA-BCSは局所再発の増加はなく,DMFSとOSは良好である.また,高い患者満足度が得られており,乳癌の局所療法として有用である.
著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top