2008 年 69 巻 11 号 p. 2867-2871
症例は63歳,男性.2004年10月に2週間続く食思不振,腹部膨満を主訴に来院し,著明な炎症反応を認めたため精査加療目的で入院した.既往に無治療の糖尿病があった.術前検査で4型胃癌と診断,生検結果は低分化型腺癌であった.開腹所見は胃全体の硬化とリンパ節腫大を認め,胃全摘・脾合併切除術を行った.病理組織学的所見では早期類似進行癌の他に,広範に炎症細胞浸潤と線維性変化を呈した化膿性胃炎があり,これが4型胃癌と誤認した原因であった.化膿性胃炎は稀で術前診断困難な疾患であり4型胃癌との鑑別がしばしば問題となる.胃癌の鑑別診断として本症を念頭に置く必要がある.