日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
原発性血小板血症の経過中にみられた進行胃癌の1例
十倉 正朗勢馬 佳彦上坂 邦夫杉本 武巳
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 11 号 p. 2872-2876

詳細
抄録

原発性血小板血症(以下essential thrombocytemia;ET)に合併した胃癌手術症例(78歳,女性)を経験した.本症例は約10年前確定診断当時,上部内視鏡検査にて腫瘤は見られずETの診断基準を満たしていた.
ETは比較的珍しい疾患で血栓や出血を伴うことが多く,血小板数と血小板機能が問題となる.骨髄系悪性転化がみられる一方,胃癌合併は一般発症と同程度と考えられる.血小板機能亢進や血小板増加は薬剤にて対応が可能であるが,出血に対する対応は難しい.本症例は血小板が200万/mm3以上になることがあるが血栓症状・出血症状を呈することなく安定し,200万/mm3以上ではラムニスチンを使用していた.胃癌手術に伴う出血や凝固異常が心配されたが,特に術後大きな合併症なく経過した.ETは個々の患者によって出血や血栓症状の出現は大きく異なり,臨床経過を観察し,手術時の急激な変化に対する準備が必要と考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top