日本臨床外科学会雑誌
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症例
肝内胆管癌との鑑別が困難であったhepatic peribiliary cystsの1切除例
濱洲 晋哉堀井 進一佐藤 文平薄井 裕治
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2008 年 69 巻 11 号 p. 2965-2969

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抄録

症例は70歳,男性.食欲低下と体重減少が出現し,近医で肝内胆管拡張を指摘され紹介となった.腹部CT検査で肝左葉グリソン鞘沿いに数珠状の低吸収領域を認め,腹部MRCP検査では門脈臍部を中心に嚢胞性病変が存在し,肝内胆管拡張との鑑別が困難であった.内視鏡的逆行性胆管造影では左肝内胆管に透瞭像を認め,その末梢に壁不整と狭窄が存在した.嚢胞性病変と胆管との交通はなかった.腹部血管造影検査で門脈左枝が造影されず,左肝動脈末梢にcorkscrew様変化があり,左葉限局の門脈圧上昇と肝萎縮が示唆された.明らかな腫瘍性病変は認めなかったが肝内胆管癌を否定できず,肝左葉切除術を施行した.切除標本で左葉は肝硬変に陥り,グリソン鞘周囲にperibiliary cystが多発していた.臨床ではperibiliary cystsは稀であり経過観察が基本だが,悪性疾患との鑑別が困難な場合など手術が選択される場合も存在し,診断方法の向上が望まれる.

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© 2008 日本臨床外科学会
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