2008 年 69 巻 2 号 p. 422-426
症例は51歳,女性.近医で胆嚢に隆起性病変を指摘され当院紹介受診となった.自覚症状はなく,血液生化学検査ではγ‐GTPの軽度高値を認めるのみで,腫瘍マーカーを含めその他に異常はなかった.腹部超音波検査で胆嚢の肝床部側に一部壁構造の不整を伴う16×8mmの広基性の隆起性病変を認め,腹部CT検査では胆嚢壁に造影される隆起性病変を認めた.以上より悪性疾患も否定できなかったためtotal biopsyとして腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理組織学的検査で悪性所見はなく,粘膜隆起部から漿膜下層のほぼ全層性に腺窩上皮からなる腺管と胃底腺,幽門腺を認めたため胆嚢異所性胃粘膜と診断した.胆嚢異所性胃粘膜はわれわれが検索した限り自験例を含め本邦報告例38例と極めて稀な疾患である.胆嚢隆起性病変の鑑別に際し念頭に置くべき疾患の1つと考え,若干の文献的考察を加え報告する.