日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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69 巻 , 2 号
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原著
  • 中口 和則, 中西 克之, 藤田 正一郎, 渡辺 康則, 石田 秀之, 甲 利幸
    2008 年 69 巻 2 号 p. 281-286
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は乳癌患者の骨転移検索として拡散強調画像併用全身MRI検査の有用性を検討することである.乳癌患者71例に骨シンチグラフィ(以下BS)と全身MRI(1.5T)検査を施行した.FOVは200cmで,fastSE T1強調とSTIR脂肪抑制による全脊椎矢状断像とfastFE T1強調とSTIR脂肪抑制による全身冠状断像を撮像し,これにb値600sec/mm2でDWIBS法(diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression)による拡散強調画像を追加した.10カ月以上の経過観察と検査で転移の有無を決定した.全身MRI検査はBSと比較してSpecificity 98.5%(BS 84.7%),Efficiency 98.6%(BS 85.9%)と優れていた.骨転移確定6例において,BSの17病変に対し全身MRIは22病変の検出が可能であった.拡散強調画像併用全身MRI検査は乳癌骨転移検索に有用な検査手段であると思われる.
  • 桧垣 健二, 大谷 彰一郎, 金 隆史, 増村 京子, 大西 哲平, 菊地 覚次, 納所 洋, 二宮 基樹, 高倉 範尚
    2008 年 69 巻 2 号 p. 287-292
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    StageII-III乳癌115例(リンパ節転移陽性87例)を対象としてPSCの効果を検討した結果,主病巣の組織学的効果grade 3(pCR)は20.9%(24/115)にえられ,核異型度が高く,ER・PgRともに陰性症例にpCRがえられやすい傾向がみられた.一方,リンパ節転移陽性例の54.0%(47/87)に転移の陰性化がみられた.転移リンパ節がPSCにより受ける効果は,主病巣と異なりER・PgRなどの状況による影響はうけなかった.また,PSCの効果は主病巣とリンパ節とで異なるために,リンパ節転移の陰性化を予測し評価することは困難と考えられた.
  • 橋詰 賢一, 鈴木 暁
    2008 年 69 巻 2 号 p. 293-297
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    目的:2004年11月より国内に導入されたより広い弁口面積を有する,St. Jude Medical Regent弁の当院での使用経験を報告する.
    方法:当院の大動脈弁狭窄症でのRegent弁使用6例を対象とし,術前,術後早期および術後12カ月まで心臓超音波を行い左室大動脈圧較差,左室心筋重量係数,左室拡張末期内径,左室内径短縮率,有効弁口面積係数を測定した.
    結果:術前後の比較で,左室心筋重量係数,左室拡張末期内径共に速やかに減少した(p<0.001).また術後12カ月まで0.85(cm2/m2)≥有効弁口面積係数を示した.
    結論:Regent弁を使用した大動脈弁狭窄症,6症例の術後の左室心筋重量係数,左室拡張末期内径は速やかに減少した.人工弁位平均圧較差も低値で血行動態,人工弁機能に関し満足な結果が得られた.術後12カ月まで有効弁口面積係数>0.85で経過しPatient-Prosthesis Mismatchを認めなかった.
症例
  • 黒部 仁, 吉田 和彦, 大木 隆生, 矢永 勝彦
    2008 年 69 巻 2 号 p. 298-301
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)は経口摂取困難な頭頸部領域癌や切除不能食道癌に対しても栄養投与経路として広く普及している.症例は59歳,男性.嚥下困難,呼吸困難を伴う進行性下咽頭癌のため,放射線療法時の栄養投与経路としてPEGをpull法で施行した.PEG造設3カ月後に胃瘻部に肉芽様の隆起を認めた.生検の結果は扁平上皮癌,下咽頭癌の転移と診断した.頭頸部領域癌症例に対するPEG後の胃瘻部位への癌転移は欧米で55例の報告がなされているが,本邦での報告は2例と少ない.成因として手技に伴う胃瘻部位への直接のimplantationが最も考えられる.稀な合併症ではあるが,PEG施行時には留意する必要があり,舌癌,咽頭癌などの患者に対してはpull法によるPEG以外の造設法を検討する必要がある.
  • 上田 さつき, 玉木 康博, 沖代 格次, 岡部 聡寛, 野口 眞三郎
    2008 年 69 巻 2 号 p. 302-307
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    乳腺血管肉腫2例を報告する.7cmの右乳房腫瘤で発症した28歳女性と,10cmの腫瘤で右乳房切除を受けた14カ月後に対側に2cmの腫瘤を認めた44歳女性である.いずれも造影MRIで早期濃染と造影遷延を認めた.日本における自験例を含む47例の集計(1932年~2007年)では,平均年齢39歳,平均腫瘍径8.3cmで42例(89.4%)に乳房切除が行われ,腋窩リンパ節転移はなかった.平均観察期間24.2カ月で30例(63.8%)が遠隔再発し,20例(42.6%)が死亡していた.
    Kaplan-Meier法による解析では診断時腫瘍径2cm以下の症例は2cmを超える症例に比べ有意に予後が良好であった.
  • 佐藤 隆宣, 角崎 秀文, 岩間 毅夫
    2008 年 69 巻 2 号 p. 308-312
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性.平成17年8月に左乳癌(T1b N0M0 stage I)に対して乳房円状部分切除およびセンチネルリンパ節生検を施行した.術後,残存乳房に対して放射線照射(合計56Gy)を行った.照射後2カ月後に発熱・咳嗽が出現し,胸部X線写真にて左上下肺野に浸潤影を,胸部CTでは左上葉から左下葉にairbronchogramを伴うconsolidationが認められた.初めに細菌性肺炎を疑い抗生剤を投与したが改善しないため,放射線肺臓炎と判断しプレドニゾロンの投与を開始した.症状・画像所見とも改善したためプレドニゾロンを漸減したところ再燃した.ここでbronchiolitis obliterans organizing pneumonia(BOOP)を疑いBALとTBLBを施行し,BOOPと診断された.治療は再びプレドニゾロン20mgより開始したところ,症状および画像所見は軽快した.プレドニゾロンは引き続き漸減したが,5mgの時点で再燃したため,再びプレドニゾロンの増量を行った.その後もプレドニゾロンの漸減中に計4回ほど再燃を起したが,4回目の再燃後は臨床症状が軽度なためステロイド投与を中止し経過を観察した.現在までに1年経過しているが再燃は認めていない.最近,乳房温存療法後の合併症の1つとして照射後のBOOPが報告されている.重篤化したという報告はないが,自験例のように再燃を繰り返すこともあり,乳房温存療法後の放射線治療の合併症として念頭に置くべきであると考えられた。
  • 島影 尚弘, 吉澤 麻由子, 田島 健三
    2008 年 69 巻 2 号 p. 313-318
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    左腋窩リンパ節転移に対しマンモトーム生検で乳癌と診断したinvasive micropapillary carcinoma(以下IMP)の1例を経験したので報告する.症例は62歳,女性.平成17年6月肺癌の検診異常で当院内科を受診した.胸部単純CTで左腋窩リンパ節の腫大を指摘され乳癌の精査目的にて7月外科紹介となった.マンモグラフィ(以下MMG)で左[AC]にカテゴリー3(以下C-3)の微小円形集簇の石灰化を認めるも乳房超音波検査(以下US)にて腫瘍は確認できず経過観察となった.平成18年2月のMMGで石灰化は不変であった.また同日施行したヘリカルCT(以下CT)では左乳房[AC]に点状造影の散在と左腋窩リンパ節増大を認めたが腫瘍は指摘できなかった.しかしリンパ節が増大し転移と考えられ,平成18年5月原発巣の検索目的にMMGの左[AC]の石灰化に対しマンモトーム生検を行い乳頭腺管癌と診断され,胸筋温存乳房切除術後の切除標本でIMPと診断された.
  • 蓮田 慶太郎, 蓮田 晶一
    2008 年 69 巻 2 号 p. 319-322
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    乳腺原発のカルチノイドはきわめて稀である.本邦では自験例を含め,1983年より現在までに50例が報告されている.今回われわれは乳腺原発カルチノイドの1例を経験したので,文献的考察を含め報告する.症例は60歳,女性.主訴は左乳房の腫瘤.2007年8月に左乳房の腫瘤を自覚し当院外科を受診した.左乳腺AE領域に径1.8cmの可動性に欠く弾性硬の腫瘤を触知した.超音波検査では辺縁不整な低エコー像を認めた.Core needle biopsyでductal carcinomaと診断されたため,左乳癌の術前診断にて乳房温存術(Bp+Ax)が施行された.病理組織学的検査はChromogranin A,シナプトフィジン染色が陽性であり,カルチノイドの診断であった.リンパ節転移は陰性でエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターとも陽性であった.術後の全身検索では他にカルチノイド病変を認めず,乳腺原発カルチノイドと診断した.
  • 村松 沙織, 小池 祥一郎, 中澤 功, 清水 忠博, 高山 文吉, 土屋 眞一
    2008 年 69 巻 2 号 p. 323-327
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    浸潤性微小乳頭癌を亜型として伴う純型粘液癌の1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.2006年5月下旬右乳房のしこりを自覚し当科受診.右乳房C領域の径15mm大の腫瘤に対し6月上旬穿刺吸引細胞診施行.悪性の疑いであったため確定診断目的でマンモトーム生検施行.Invasive micropapillary carcinoma(IMPC)および粘液癌の診断にて当科入院,胸筋温存乳房切断術および右腋窩リンパ節郭清を施行した.病理組織診断はIMPCおよび粘液癌,10×12mm.術後EC療法およびweekly TXLをそれぞれ4クール施行し,抗エストロゲン療法施行中である.術後1年4カ月現在,再発なく病勢の悪化を認めていない.
  • 山中 澄隆, 荒井 宏雅, 利野 靖, 益田 宗孝
    2008 年 69 巻 2 号 p. 328-331
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性.平成18年9月頃から呂律が回りづらく徐々に悪化していた.筋力の低下も出現し,当院神経内科紹介され精査を施行され筋緊張性ジストロフィーと診断された.スクリーニングの為撮影した胸部CTにて前縦隔腫瘍を指摘され平成19年2月当科紹介となった.確定診断を得るため摘出生検を施行した.術後は手術室にて抜管可能であったが喀痰が多く,喀出も不良であり高炭酸ガス血症を生じ,胸部X線写真上無気肺を認め気管支鏡下に喀痰吸引を施行した.第4病日より歩行を開始してから喀痰も自己喀出可能となり術後12日目に退院となった.筋緊張性ジストロフィーは周術期管理に関して注意が必要とされ,術前に十分な説明と対処法を考慮しておくことが重要であると考えられた.
  • 根津 賢司, 高橋 広, 松岡 欣也, 佐川 庸, 酒井 堅
    2008 年 69 巻 2 号 p. 332-336
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,女性.下腹部痛を主訴に近医を受診し,腹腔内出血の診断にて当院3次救急搬送された.腹部造影CTにて左卵巣の嚢胞性病変および周囲血管からの造影剤漏出,腹腔内出血を認めた.入院後経時的に貧血の進行を認め,緊急手術の方針となったが,術前胸部単純X線写真,CTにて左胸水も認め,胸腔ドレーンを挿入し,血胸と診断した.全身麻酔下に腹腔鏡下手術を開始し,出血部は左卵巣嚢腫破裂部であり,嚢腫摘出を施行した.胸腔ドレーン血性排液は650ml,腹腔内出血は500mlであり,両者の性状は同じであった.血胸の原因が不明のため,術後胸腔ドレーンよりウログラフィンによる胸腔造影を施行したところ,腹腔内への造影剤漏出を認め,左横隔膜に小孔の存在が推測された.本症例では腹腔内出血による腹圧上昇と呼吸運動による胸腔内の陰圧により腹腔内出血が横隔膜小孔を通じて胸腔内に引き込まれたものと考えられ,本邦報告例ではこれまで1例のみで非常に稀な病態であった.
  • 西川 敏雄, 井上 文之, 石井 泰則, 高橋 正彦, 元井 信
    2008 年 69 巻 2 号 p. 337-340
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.2006年5月に上行結腸癌にて手術を施行,術後補助化学療法を行なった後経過観察となっていた.2007年4月末に胸部CTにて異常陰影を認めたため当院受診となった.画像上,両肺野に多発する腫瘤を認めた.腫瘤は充実性のものと空洞形成を伴うものとがあり,空洞壁の厚さは最大で約3mmと薄かった.臨床経過より大腸癌肺転移を疑い手術を施行した.胸腔鏡補助下にて部分切除が可能であった充実性の腫瘤と空洞形成を伴う腫瘤を切除した.術中迅速病理検査では切除したすべての腫瘤に中分化腺癌を認め大腸癌の肺転移との診断であり,残りの腫瘤の切除は行わず手術を終了した.大腸癌を含めた悪性腫瘍の肺転移巣における薄壁空洞形成は稀ではあるが,悪性腫瘍の既往がある患者に薄壁空洞形成を伴う肺腫瘤を認めた場合には肺転移の可能性も念頭において診断および治療を行うことが重要であると考えられた.
  • 澤井 利次, 上田 順彦, 戸川 保, 木村 俊久, 澤 敏治, 加藤 泰史
    2008 年 69 巻 2 号 p. 341-346
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    食道平滑筋肉腫と扁平上皮癌が同時発生した極めて稀な症例を経験したので報告する.症例は60歳代,男性.嚥下時咽頭部の不快感を認め近医受診.食道腫瘍を指摘され精査目的に当科に紹介入院となった.上部消化管内視鏡検査では胸部上部食道に隆起性病変を認め,その肛門側に陥凹性病変を認めた.生検では,隆起性病変に異型細胞を認め,陥凹性病変に扁平上皮癌を認めた.食道内癌多発の診断で胸腔鏡下食道亜全摘術,3領域リンパ節郭清術を施行した.切除標本で,隆起性病変は平滑筋肉腫,陥凹性病変は食道癌と診断された.食道亜全摘術1年後に,右肺上葉に平滑筋肉腫の転移を認め,右肺上葉切除術施行.肺切除後6カ月経過した現在,再発の徴候は認めていない.平滑筋肉腫は比較的稀な食道腫瘍であり,さらに扁平上皮癌との同時発生症例は極めて稀であり報告した.
  • 丸野 要, 福田 直人, 杉山 保幸, 水口 國雄
    2008 年 69 巻 2 号 p. 347-350
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.他院にて頸椎症の治療中に下血を認め,上部消化管内視鏡検査および生検を施行したところ,胃癌(高分化型管状腺癌)と診断され手術目的にて当科を紹介された.上部消化管内視鏡検査で胃体上部前壁小彎寄りに3型の病変を認めた.平成16年12月3日胃全摘術,脾摘術,胆摘術,D2郭清を施行した.切除標本の肉眼所見では,胃体上部前壁に平らな隆起性病変があり,その上に乗るように小彎側に軽度の隆起性病変を認めた.病理組織学的所見では,前者はsm中心に厚く広がる末梢神経の増生で,断端神経腫と診断した.後者はtub1,sm1,ly0,v0,n0(0/57)でU1IIscarを伴っていた.胃に関する報告としては,私どもの検索しえた限りでは,手術の既往のない症例および胃癌に発生した症例の報告はみられなかった.潰瘍瘢痕を伴う早期胃癌による神経損傷が原因と考えられる断端神経腫の1例を報告する.
  • 稲田 聡, 荒金 英樹, 片野 智子, 安井 仁, 閑 啓太郎, 清水 正啓
    2008 年 69 巻 2 号 p. 351-354
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.糖尿病のコントロール目的の入院中に上部消化管内視鏡にて胃角部後壁に早期胃癌を認めた.術前のCT,PETで遠隔転移を認めなかった.腹腔鏡補助下に幽門側胃切除術施行し,0-IIa+IIc,tub1>tub2>por1,sm,ly1,v3,PM(-),DM(-),N0,StageIAと診断された.術後4カ月目にポート挿入部の創部近傍に1.5cm大の皮下腫瘤を触知した.CTでも皮下に腫瘤性病変を認めたために,局所麻酔下に切除した.切除標本の病理検査結果では腺癌であり,摘出した胃癌の皮膚転移と診断された.皮膚腫瘍摘出後のPETでは他に転移巣を認めなかった.現在,全身化学療法施行中である.内臓悪性腫瘍の皮膚転移は比較的稀であり,一般的に終末期に認められることが多い.今回われわれは,終末期でない早期胃癌の孤立性皮膚転移を経験したので報告する.
  • 蓮田 憲夫, 腰塚 浩三, 大矢知 昇, 高野 邦夫, 松本 雅彦
    2008 年 69 巻 2 号 p. 355-359
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.35歳時に胃癌で幽門側胃切除術が施行された.病理診断は0-IIc,T1(m),N1,M0,tub2>sig,ly0,v0,stage IBであった.術後4年目に,ALPの上昇とCA19-9の上昇を認めた.種々の検査で腫瘤性病変を認めなかったがALPとCA19-9はその後も上昇した.原発不明癌として精査をすすめたところ,PET-CTで第二胸椎と左腸骨に局所的集積が指摘され,骨シンチで全身骨のびまん性骨転移が認められた.術後4年6カ月目に胃癌播種性骨髄癌症の診断で化学療法を開始したが,術後4年11カ月目に癌死した.
  • 境 雄大, 山田 芳嗣
    2008 年 69 巻 2 号 p. 360-364
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.腹部膨満感を主訴に近医内科を受診し,腸閉塞と診断され,入院した.上部消化管内視鏡検査および生検で4型胃癌と診断され,下部消化管内視鏡検査で横行結腸癌が疑われていた.内科入院9日目に腹痛が出現し,精査で消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断され,当科に入院した.開腹すると横行結腸浸潤を伴う4型胃癌で,胃体部前壁が穿孔していた.胃全摘,横行結腸合併切除を行った.病理組織診断は低分化腺癌で,T4,N1,H0,P1,CY0,M0,Stage IV,根治度Bであった.術後横隔膜下膿瘍,膵液瘻を合併したが,保存的に軽快した.術後36日目に食事を開始し,化学療法施行後,術後52日目に退院した.4型胃癌穿孔は稀であり,他臓器合併切除を伴う1期的切除の報告は少ない.4型胃癌穿孔患者では,全身状態,癌の確定診断の有無,根治性,予後,術後QOL等を含めて評価し,術式を決定すべきである.
  • 吉田 直, 東風 貢, 渡邊 慶史, 望月 晋, 大久保 貴生, 高山 忠利
    2008 年 69 巻 2 号 p. 365-369
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは低蛋白血症を合併した多発胃癌の症例を経験したため報告する.症例は80歳,男性.上腹部痛を主訴に近医を受診,精査加療目的で当科に紹介となった.理学所見では両下肢に軽度の浮腫,血液検査では高度の低蛋白血症(TP 4.9g/dl,Alb 1.8g/dl)を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃体部の1型腫瘍と前庭部の2型腫瘍を認め,生検にて共にgroupV,adenocarcinoma,多発胃癌と診断した.肝・腎機能は異常なく,糞便中のα1-アンチトリプシン排泄量は470mg/day,α1-アンチトリプシンクリアランスは22.5ml/dayと共に上昇していた.術前に高カロリー輸液などの栄養管理を行ったが低蛋白血症は改善せず,胃癌からの蛋白漏出と診断,胃全摘術,D2郭清を施行した.腫瘍は10cmの表面がカリフラワー状に分葉した1型腫瘍と9cmの2型腫瘍で,1型腫瘍は中分化型腺癌で深達度sm2,2型腫瘍は乳頭状増殖を成す乳頭腺癌で深達度seであった.術後の経過は良好で,術後16日目には低蛋白血症はTP 6.8g/dl,Alb 2.9g/dlまで改善した.本症例のように蛋白漏出性胃腸症が悪性腫瘍に続発する場合は術前の栄養管理による改善が困難な場合が多く,原発巣の切除を早期に施行することが最も確実な治療方法である.
  • 飯田 通久, 吉野 茂文, 上野 富雄, 坂本 和彦, 岡 正朗
    2008 年 69 巻 2 号 p. 370-374
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,男性.下腿浮腫を近医で指摘され,当院受診した.血液検査で血清総蛋白3.5g/dl,アルブミン1.6g/dlと低蛋白血症を認めた.上部消化管造影検査,内視鏡検査で胃体部から前庭部に巨大な5型腫瘍を認めた.99mTc-human serum albuminを用いたシンチグラフィーにて胃前庭部に一致する部位に放射活性の集積が描出されたため,蛋白漏出性胃癌の診断にて胃全摘術を施行した.腫瘍は4型部分と1型部分から構成される5型で,4型部分は低分化腺癌,1型部分は乳頭管状腺癌が認められた.病理診断はpT3,pN2,H0,P0,CY1で根治度はCであった.術後,比較的速やかに低蛋白血漿は改善したが,術後12カ月目に腫瘍死した.蛋白漏出性胃癌の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 浅野 智成, 日下部 光彦, 種村 廣巳, 大下 裕夫, 波頭 経明, 山田 鉄也
    2008 年 69 巻 2 号 p. 375-379
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性.黄疸・食思不振を主訴に入院となった.精査にて,十二指腸乳頭部小細胞癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術・リンパ節郭清(D2)を施行した.術後51病日より,CBDCAおよびCPT-11の化学療法を全4コース施行した.その後上腸間膜動脈周囲のリンパ節再発を認め,CDDPおよびVP-16の化学療法と放射線療法を施行し,リンパ節の縮小を認めた.しかし,多発性骨転移を認め,術後247病日に多臓器不全にて死亡した.十二指腸乳頭部小細胞癌は本邦では自験例を含め35例が報告されているが,その予後は極めて不良で,手術に加えて化学療法や放射線療法などより有効な集学的治療法の開発が必要である.
  • 浦田 雅子, 湯ノ谷 誠二, 鮫島 隆一郎, 酒井 正, 石光 寿幸, 田渕 正延
    2008 年 69 巻 2 号 p. 380-384
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例1は77歳,女性.間欠的に出現し自然軽快する下血に対し精査を行った結果,小腸出血が疑われた.血管造影では出血部位同定に至らず,開腹手術および術中内視鏡検査を施行した.初回手術時の術中内視鏡検査では病変部位同定に至らなかったが,約1カ月後の再下血時に,再度開腹手術を行い同様の方法で行った術中内視鏡検査でTreitz靱帯から約50cmの空腸に出血点を認め,空腸部分切除術を行った.症例2は90歳,女性.3日間持続する下血に対し精査を行った結果,小腸出血と考えられた.血管造影では出血とは因果関係のない小動脈瘤以外には異常所見なく,出血部位同定に至らなかった.開腹手術および術中内視鏡検査を施行したところ,回腸末端部から約70cmの回腸に出血点を認め,回腸部分切除術を行った.
    両症例とも,病理組織学的に動静脈奇形と診断しえたが,その病変が極めて微小であったため,他の術前画像検査では部位同定に至らず,術中に施行した内視鏡検査が最も有用であった.
  • 鵜瀞 条, 瀧田 尚仁, 鈴木 義真, 塩崎 哲三, 玉崎 秀次, 鶴丸 昌彦
    2008 年 69 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    虚血性腸疾患は基礎疾患を有する高齢者に多く,中でも虚血性小腸炎は稀である.今回われわれは基礎疾患のない若年男性で,虚血性小腸炎による腸閉塞の1例を経験したので報告する.症例は32歳,男性.既往はアトピー性皮膚炎のみで手術歴はない.約10年前から時々腹部膨満感を自覚しており,1年前他院で腸閉塞の診断で保存的治療を受けた.平成18年3月,腹部膨満感を主訴に当科受診.腹部単純写真ではニボーを伴う小腸ガス像を認めた.腹部CT検査で左下腹部に造影効果を伴う腫瘤と,これに連続した小腸の拡張像を認めたため,小腸腫瘍を強く疑った.小腸造影ではTreitz靱帯より約200cmの小腸に約4cmの全周性の狭窄を認めた.血管造影,下部消化管検査ではいずれも異常はみられず,小腸狭窄の診断で手術を施行した.開腹所見では小腸に4箇所の狭窄部を認め,小腸部分切除を行った.切除標本の病理組織学的検査では,肉芽腫や全層性細胞浸潤などのCrohn病を思わせる所見はなく,菲薄化した粘膜と,粘膜下層の強い線維増生と肥厚がみられる虚血性腸炎の所見であった.
  • 中右 雅之, 宮下 正, 前田 賢人
    2008 年 69 巻 2 号 p. 390-394
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.繰り返す下血の精査目的に入院.全身にcafé au lait spotと皮膚結節認めvon Recklinghausen病と診断された.CTで腹腔内に造影される多発腫瘤,腹部血管造影では上腸間膜動脈領域に腫瘤と一致した濃染像を複数認め,小腸造影では多発小腸憩室を認めた.小腸腫瘍,または小腸憩室からの出血と考え,開腹手術を行った.空腸から回腸にかけ,壁外性発育を示す集簇する大小多数の腫瘍を認めた.腫瘍集簇部の小腸を切除,散在する腫瘍は可及的に全切除した.免疫染色にて腫瘍はKIT,CD34の発現が陽性で,小腸多発GISTと診断した.憩室は肉眼的,組織学的に腫瘍と連続し,下血は憩室を介した多発小腸GISTからの出血と診断した.
  • 今西 築, 佐野 勝洋, 植野 望, 一井 重利
    2008 年 69 巻 2 号 p. 395-398
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.平成4年10月に原発巣が不明の多発肝転移およびリンパ節転移の診断を受けていたが,経過観察となっていた.平成5年1月に,腹痛のため当院を救急受診し,汎発性腹膜炎にて緊急手術となった.回腸末端部約20cmにわたって壁の肥厚,硬化および膿苔の付着がみられたため,同部の穿孔と考え回盲部切除を行った.術後の病理検査でびまん浸潤型の回腸癌(中分化腺癌)と診断した.小腸癌はほとんどが輪状に発育し,本症例のように腸管の長軸に沿ってびまん性の発育をしめした症例は,過去に報告がなく極めて稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 平出 貴乗, 米山 文彦, 落合 秀人, 中澤 秀雄, 林 英司, 北村 宏
    2008 年 69 巻 2 号 p. 399-404
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    2000年12月から2006年9月までに魚骨による消化管穿孔を8例経験したので臨床的検討を加え報告する.
    年齢は59歳から89歳で男性7例,女性1例.穿孔部位は回腸4例,横行結腸2例,S状結腸2例であり,全症例に対して手術を行なった.慢性炎症型4症例のうち穿孔部不明症例が3例存在したが,魚骨の確実な摘出により治癒することが確認された.
    MDCT導入以前では術前に石灰化も含め病変を指摘できた症例は40%であったが,導入以降は魚骨同定率,術前診断率ともに100%でありその有用性が確認された.
    魚骨穿孔は,詳細な病歴聴取およびMDCTの施行により術前の確定診断が比較的容易となったが,魚骨遺残により再手術が必要となる症例もあり,急性腹症の鑑別診断として念頭におかなければならない疾患の一つであると考えられた.
  • 北山 佳弘, 余田 洋右, 岡本 信洋
    2008 年 69 巻 2 号 p. 405-408
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の男性で,脳性麻痺で近医に通院中であった.食欲低下と腹部膨満のため投薬を受けたが改善せず,症状が増悪したため麻痺性腸閉塞の診断で当院に紹介入院した.入院時腹部単純X線検査では腹部全体に著明に拡張した腸管ガス像を認めたが脳性麻痺に伴う麻痺性腸閉塞と診断し,保存的に経過観察した.しかし症状は改善せず,大腸内視鏡検査で上行結腸部に内視鏡の通過が不可能な渦巻き様狭窄を認め,結腸捻転症の疑いで手術施行した.開腹時,回盲部は時計方向に捻転しており,回腸末端から盲腸の一部に壊死部を認めたため回盲部切除術を施行した.術後経過は良好で術後7病日から経口摂取可能となり,術後25病日で退院した.
  • 千堂 宏義, 白川 幸代, 西村 透, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2008 年 69 巻 2 号 p. 409-413
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.数年前より頻尿,混濁尿,排尿困難を主訴に,当院泌尿器科で前立腺炎の診断のもと薬物療法をうけて軽快,再燃を繰り返していた.再び同様の症状が出現したため,2007年3月上旬に当院泌尿器科を受診したところ,尿細菌培養検査で大腸菌が検出された.大腸内視鏡検査と腹部CT検査でS状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻と診断されたため,5月上旬に当科紹介受診となった.注腸造影検査では小腸瘻も認め,小腸S状結腸膀胱瘻と診断し,5月下旬にS状結腸と直腸の一部を切除したHartmann手術,回腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査で悪性所見は認めず,S状結腸憩室炎による回腸S状結腸膀胱瘻と診断された.今回われわれは,きわめて稀なS状結腸憩室炎による回腸S状結腸膀胱瘻の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 矢ヶ部 知美, 三好 篤, 中房 祐司, 北島 吉彦, 佐藤 清治, 宮崎 耕治
    2008 年 69 巻 2 号 p. 414-417
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.70歳時より肛門周囲掻痒感を自覚し市販外用薬を使用していた.73歳時に肺癌に対して右上葉切除術,74歳時に早期胃癌に対して幽門側胃切除術を施行された.その後も肛門部の掻痒感が増悪し,近医受診時には肛門を中心に広範な湿疹様病変を認めた.同部位より生検を施行したところ,肛囲乳房外Paget病と診断されたため紹介受診した.Mapping biopsyの結果,歯状線より1cm口側の直腸粘膜までPaget細胞を認めたため,腹会陰式直腸切断術を行った.肛門Paget病は難治性皮膚湿疹病変として治療され診断が遅れることが多い.また悪性腫瘍を合併する頻度が高く,本疾患の特徴を理解して精査すべきである.
  • 安井 祐司, 向井 友一郎
    2008 年 69 巻 2 号 p. 418-421
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    消化管の腺扁平上皮癌は比較的稀な疾患である.今回われわれは骨盤腹膜炎症状にて発症した直腸腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.症例は44歳,女性.下腹部痛にて通院中であった産婦人科を受診したところ,子宮内膜症が疑われ当院産婦人科紹介となる.MRI,CT検査では炎症性疾患が疑われるも消化管疾患が否定できず注腸検査,内視鏡検査施行.生検の結果,直腸扁平上皮癌と診断.遠隔転移を認めず,低位前方直腸切除術を施行し,術後病理組織検査の結果で腺扁平上皮癌と診断した.術後化学療法,放射線治療を行うも術後第346日目に死亡した.
  • 松下 弘, 朝蔭 直樹, 山本 哲朗, 鈴木 貴久, 小林 滋, 山崎 滋孝
    2008 年 69 巻 2 号 p. 422-426
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.近医で胆嚢に隆起性病変を指摘され当院紹介受診となった.自覚症状はなく,血液生化学検査ではγ‐GTPの軽度高値を認めるのみで,腫瘍マーカーを含めその他に異常はなかった.腹部超音波検査で胆嚢の肝床部側に一部壁構造の不整を伴う16×8mmの広基性の隆起性病変を認め,腹部CT検査では胆嚢壁に造影される隆起性病変を認めた.以上より悪性疾患も否定できなかったためtotal biopsyとして腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理組織学的検査で悪性所見はなく,粘膜隆起部から漿膜下層のほぼ全層性に腺窩上皮からなる腺管と胃底腺,幽門腺を認めたため胆嚢異所性胃粘膜と診断した.胆嚢異所性胃粘膜はわれわれが検索した限り自験例を含め本邦報告例38例と極めて稀な疾患である.胆嚢隆起性病変の鑑別に際し念頭に置くべき疾患の1つと考え,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 平井 健次郎, 寺島 剛, 細川 慎一, 小野 一雄, 武内 英二, 財間 正純
    2008 年 69 巻 2 号 p. 427-432
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.2004年5月胆嚢結石症の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下LC)を施行した.術中胆汁の漏出は認めず臍部のポートより胆嚢を摘出した.病理組織診断はsevere dysplasiaであった.2005年12月頃より有痛性の腹部腫瘤を触知し入院,腹壁腫瘤摘除術を施行し,病理組織学的検討で胆嚢粘膜内癌によるport site recurrenceと考えられた.転移経路は胆嚢の創外摘出時胆嚢管断端のポート部腹壁への接触によるimplantationが最も考えられた.LCの増加に伴いLC後に胆嚢癌が判明する症例は今後も後を絶たないであろう.術前検査,術中所見ともに癌が疑われなくともport site recurrenceの危険性があることを念頭におき慎重な手術操作を心掛ける必要があると考えられる.
  • 腰塚 靖之, 蒲池 浩文, 高橋 徹, 田原 宗徳, 神山 俊哉, 藤堂 省
    2008 年 69 巻 2 号 p. 433-437
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.他院で胆嚢ポリープと診断され腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行された.術後胆嚢癌と診断されたが,追加切除はせず経過観察されていた.術後4年8カ月のCTで臍右側に4×5cmの腫瘤を認め,経過観察とされていたが,Second opinion目的に術後5年1カ月で当科初診.CT上腫瘤は8×8cmに増大しており,細胞診でadenocarcinomaと診断され胆嚢癌のポート部再発が疑われた.病巣は局所に限局していたため手術を施行した.腫瘤とともに大網,腹膜,腹直筋,皮膚を切除し,コンポジションメッシュを用いて腹壁を再建した.病理組織学的に胆嚢癌再発であることが確認された.術後1年11カ月無再発生存中である.偶発胆嚢癌のポート部再発は一般に予後不良であるが,初回術後1年以上経過し,再発病巣が限局している場合,切除で良好な予後を得られる可能性がある.
  • 綱島 亮, 鳥 正幸, 赤松 大樹, 水谷 伸, 辻本 正彦, 仲原 正明
    2008 年 69 巻 2 号 p. 438-442
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性.突然の吐血を主訴に当科紹介となった.腹部造影CTにて膵頭部に血腫および内部に動脈瘤を認めた.血管造影検査にて膵十二指腸動脈瘤破裂と診断された.腹腔動脈領域はすべて上腸間膜動脈より膵頭部動脈アーケードを介して造影された.動脈塞栓術ではcoiling困難であったため,緊急開腹手術を施行した.正中弓状靱帯によって腹腔動脈起始部が顕著に圧迫されており,腹腔動脈起始部圧迫症候群(CACS)と診断した.正中弓状靱帯を切離することにより腹腔動脈の血流が再開し,求肝性に保持可能であったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(PpPD)を施行した.術後経過は良好であった.腹腔動脈起始部に狭窄を伴う膵頭部動脈瘤破裂症例においては,CACSの可能性を念頭に置くことと,肝動脈血流量を測定しながら膵頭切除等の手術操作を進めることが重要であると考えられた.
  • 竹島 薫, 山藤 和夫, 馬場 秀雄, 岡本 信彦, 及川 太, 松井 淳一
    2008 年 69 巻 2 号 p. 443-447
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    血清CEA高値を契機に発見された膵腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.症例は84歳,男性.高血圧にて当院循環器科通院中にごく軽度の左下腹部痛を自覚したため便潜血反応および腫瘍マーカーを調べたところ,便潜血反応は陰性であったがCEA高値であった.当院消化器内科受診し精査にて膵体尾部癌と診断され手術施行した.術後病理診断は,膵腺扁平上皮癌であった.われわれ消化器専門医にとって本症例の主訴に対する初期スクリーニング検査として下部消化管検査が妥当ではあるが,便潜血反応のみを施行した場合には本症例の膵癌の診断が遅れた可能性は否定できない.つまり,消化器専門医が診察した場合に癌の診断・発見が遅れてしまうという矛盾が自験例には潜在している.このような矛盾の存在を常に意識して診療を行うことも診療の精度をさらに高める上で重要であると考えられる.
  • 鈴村 和大, 斉藤 慎一, 黒田 暢一, 麻野 泰包, 藤元 治朗
    2008 年 69 巻 2 号 p. 448-451
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.近医にて膵頭部腫瘍を指摘され,精査加療目的にて当院入院.腹部造影CTにて膵頭部に約1.5cm大の不均一に造影される腫瘍を認め,膵管の拡張を認めた.また大動脈壁に石灰化を認めた.Three dimensional computed tomography(3D-CT)では腹腔動脈と上腸間膜動脈は根部で共通幹を形成していた.しかし,その起始部は確認できなかった.さらに下腸間膜動脈が発達しており,結腸辺縁動脈を介して,中結腸動脈から腹腔動脈と上腸間膜動脈の共通幹に血液を供給していると考えられた.よって動脈硬化性の腹腔動脈と上腸間膜動脈の共通幹閉塞と診断.これら動脈側副路である結腸間膜動脈を損傷しないように,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.膵頭十二指腸切除術の術前に血行動態を把握することは重要であり,そのために3D-CT検査は有用であると思われた.
  • 岡島 明子, 河野 弘, 木村 充志, 津金 恭司, 竹之内 靖, 小川 敦司
    2008 年 69 巻 2 号 p. 452-456
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性で腹痛を主訴に来院した.21年前に卵巣腫瘍で他院にて子宮・両側附属器摘出術施行された既往がある.2007年1月,胃粘膜下腫瘍と腹腔内多発腫瘍の診断で腫瘍切除術施行された.病理組織像より卵巣腫瘍との類似が疑われたため他院での病理組織標本を取り寄せて比較するとともに免疫組織染色も施行したところ,いずれも卵巣顆粒膜細胞腫の転移と診断された.術後7カ月経過した現在,再発徴候を認めていない.卵巣顆粒膜細胞腫は再発をきたすことも稀ではないとされているが経過が長期にわたるために,その経緯については十分解明されていない.本症例は前回手術の組織像と比較して診断することができた貴重な1例と考え報告する.卵巣腫瘍の手術既往のある患者は少なくないが,粘膜下腫瘍像をとる胃病変や腹腔内腫瘍の鑑別診断としてその転移を考慮することは重要と思われた.
  • 井上 行信, 高橋 雅俊, 花本 尊之, 砂原 正男
    2008 年 69 巻 2 号 p. 457-460
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    48歳,女性.2004年に臍部に腫瘤を自覚し,ときに軽度の疼痛を伴い,排膿を数回認めた.徐々に増大し軽快しないため,2006年10月に来院した.臍直下に2cmの硬質腫瘤を触知し,腹部超音波,CT,MRIで臍直下に3×2cmの充実性腫瘤を認めたが術前診断は困難であった.病理組織学的所見で異所性子宮内膜症と診断した.臍部の皮膚,皮下子宮内膜症は比較的稀であるが,女性で臍部に発生した腫瘤の鑑別疾患として,念頭に置くべき疾患であると考えられた.
  • 安 炳九, 望月 能成, 清水 泰博, 伊藤 誠二, 谷田部 恭, 山村 義孝, 加藤 知行
    2008 年 69 巻 2 号 p. 461-465
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.既往歴・家族歴に特記事項はなし.検診で腹腔内腫瘍を指摘され当センターを紹介された.腹部CT検査では横行結腸間膜に大きさ45mm×25mmの腫瘤性病変が認められ,一部十二指腸水平部と連続していた.手術所見では主腫瘍は十二指腸水平部から上腸間膜静脈右側の結腸間膜内に存在し,回結腸動静脈,右結腸動静脈を巻き込んでいた.また大網にも5mmの小結節を2箇所認め腫瘍の腹膜転移と術中診断したが,肉眼的な根治術が可能と判断し切除術を行った.病理組織学的検査では,主腫瘍および腹膜結節において,核異型や核分裂像がほとんどない紡錘形の線維芽腫瘍細胞が増生とケロイド様の膠原繊維の増生を認め,腫瘍辺縁部では腫瘍細胞が不規則に浸潤性増殖していた.以上の所見から多発性腹腔内デスモイド腫瘍と診断した.現在,術後25カ月無再発経過観察中である.
  • 磯野 忠大, 小林 利彦, 和田 英俊, 小西 由樹子, 宮木 祐一郎, 小泉 圭
    2008 年 69 巻 2 号 p. 466-470
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    44歳,男性.検診にて胃の小彎近傍に石灰化病変を指摘され当院に紹介された.腹部CT検査およびMRI検査では境界明瞭で脾臓と同程度に造影され,内部に石灰化を伴う3cm大の腫瘤性病変として認められた.画像所見から小網内Castleman病の疑いにて,腹腔鏡下に摘出術を行った.腫瘍は割面が黄白色の充実性腫瘤で,病理組織学的診断はhyaline vascular typeのCastleman病であった.
  • 菊池 大和, 中澤 秀雄, 米山 文彦, 林 英司, 渡辺 哲也, 北村 宏
    2008 年 69 巻 2 号 p. 471-474
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    臍炎にて発症し炎症が軽快後,胆石症も同時に腹腔鏡下にて根治術を施行した高齢者の尿膜管遺残症を経験したので報告する.症例は78歳,男性.臍からの排膿を主訴に当院を受診した.血液検査所見で著明な炎症反応を認め,腹部CT検査にて臍部から膀胱頂部にかけて高濃度領域を認めたため尿膜管遺残膿瘍と診断し,抗菌剤とドレナージにより炎症の改善を待った.腹部CTで偶然胆嚢内に結石を認めたため,同時に腹腔鏡下にて手術を施行した.まず左前腋窩線上臍高部,右前腋窩線上臍高部,右季肋下,剣状突起下にトロッカーを挿入し,胆嚢摘出術を施行した.さらにMcBurney点の対側やや左外側に追加し,尿膜管を摘出した.術後経過は良好で,術後4日目に退院した.検索しえた限りでは,胆石症と同時手術した尿膜管遺残症の報告は本邦で初めてである.尿膜管遺残症は腹腔鏡下の適応であり,その症例に応じたトロカールの挿入位置を工夫することが大切であると思われた.
  • 大平 正典, 清水 喜徳, 安田 大輔, 高 順一, 青木 武士, 草野 満夫
    2008 年 69 巻 2 号 p. 475-479
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    両側閉鎖孔ヘルニアの両側自然還納例を経験したので報告する.症例は84歳,女性.腹痛,嘔気を主訴に外来を受診.腹部単純X線像にてイレウスを呈していた.原因精査目的にて緊急腹部造影CT検査を施行したところ,両側閉鎖孔に軟部組織陰影が認められ両側閉鎖孔ヘルニアと診断した.緊急手術を考慮したがCT検査後に排便が認められ,また,症状の改善も認められたため初回CT検査から2時間後に再度CT検査を施行した.2回目のCT検査所見では両閉鎖孔の軟部組織陰影は消失し,腸管の拡張像も改善していたため両側が自然還納したものと考えられ,後日,待機的に手術を行った.閉鎖孔ヘルニアにおいて自然還納の報告例はあるものの,閉鎖孔ヘルニアの両側自然還納例の報告は認められず,極めて稀な症例と考えられた.
  • 伊藤 貴明, 平松 聖史, 待木 雄一, 櫻川 忠之, 関 崇, 加藤 健司
    2008 年 69 巻 2 号 p. 480-483
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.2003年2月腹壁ヘルニアと診断され手術を勧められていたが,放置していた.2006年10月腹痛が出現,当院救急外来を受診した.上腹部正中に鶏卵大の著明な圧痛を伴う腫瘤を触知した.CT上同部位に腹腔外への脱出した小腸像とその周囲の液体貯留像を認めた.脱出した腸管の用手的還納が困難であったため白線ヘルニア嵌頓と診断,同日緊急手術を施行した.手術所見では,白線上に直径2cmのヘルニア門を認めた.ヘルニア嚢を全周性に剥離,嵌頓した腸管はうっ血のみで壊死を認めなかったのでヘルニア嚢はそのまま還納した.ヘルニア門の修復はtension free repairとし,白線の前後面2層にpolypropylene mesh sheetを挿入した.術後経過は良好で術後2日目に退院,再発なく経過している.白線ヘルニアの小腸嵌頓は稀である.この稀な白線ヘルニア嵌頓の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 錦織 直人, 明石 諭, 松山 武, 今西 正巳, 渡辺 明彦, 川口 正一郎
    2008 年 69 巻 2 号 p. 484-488
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/05
    ジャーナル フリー
    75歳の女性.平成18年8月下旬ヘビに右第1・2趾を咬まれ当院外来受診し経過観察入院となった.腫脹の進行に伴い横紋筋融解症による急性腎不全,高度炎症所見上昇,呼吸状態の悪化を認め,当救命救急センター紹介となった.症状の経過からマムシ咬傷を疑い,受傷後1日半経過していたが抗マムシ毒素血清とセファランチン®を投与した.CPKは112,200IU/lまで上昇していたが抗マムシ毒素血清投与後速やかに正常化した.急性腎不全・呼吸不全と肝機能の悪化を認め,持続血液濾過透析と人工呼吸管理を行った.尿量は受傷後3週目より徐々に回復し,4週目に透析から離脱した.マムシ咬傷による死亡原因は急性腎不全によるものが最多で,その原因は横紋筋融解によるミオグロビン血症やマムシ毒自体の腎毒性等による.急性期に透析・人工呼吸管理等の集中加療を行い救命しえた1例を経験したので報告する.
編集後記
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