日本臨床外科学会雑誌
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原著
バンコマイシンを経口投与した外科入院患者における偽膜性腸炎およびMRSA腸炎の検討
田村 淳北口 和彦崎久保 守人上村 良大江 秀明吉川 明石上 俊一馬場 信雄小川 博暉坂梨 四郎
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2008 年 69 巻 7 号 p. 1565-1572

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抄録
当院外科入院患者において,腸炎症状を発症した症例に偽膜性腸炎またはMRSA腸炎を疑ってバンコマイシンの経口投与を行ったのでその投与状況と効果について検討した.2001年1月から2005年4月までの外科入院患者4867例のうちバンコマイシンの経口投与を受けた症例は41例で,約9割が手術症例であった.その内訳はCD抗原陽性で偽膜性腸炎と診断された症例が10例,便培養検査にてMRSA腸炎と診断された症例が10例,これらを疑ってバンコマイシンを投与したが検査結果により否定された症例が21例で,臨床症状からの正診率は49%であった.治療により全例において症状は軽快し,腸炎による死亡例は認められなかった.腸炎発症前に投与された抗菌薬をセフェム系とカルバペネム系に分けて検討すると,後者の方が腸炎発症リスクが高いと考えられた.手術部位別の比較では,MRSA腸炎は上部消化管手術後に多く発症する傾向がみられた.バンコマイシンはこれらの腸炎の標準的治療薬であるが,腸内細菌叢を攪乱することによりVRE等の新たな耐性菌感染症の発症リスクとなるため,適正な投与基準を設ける必要があると思われる.
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© 2008 日本臨床外科学会
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