日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
原著
90歳以上超高齢者腹部外科手術症例の術後合併症と死亡例の検討
田中 俊一島山 俊夫増田 好成麻田 貴志岩砂 里美江藤 忠明千々岩 一男
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 7 号 p. 1585-1589

詳細
抄録

はじめに:当科で経験した腹部外科手術症例について,年齢別,緊急・待期手術別,併存疾患別に術後合併症発生率と術後30日以内死亡率を検討し,90歳以上の高齢者の手術における問題点を検討した.対象:2003年4月から2006年3月までの3年間に腹部手術を行った1,534例を対象とし,うち80歳代が240例,90歳以上の超高齢者は52例であった.結果:90歳以上の超高齢者群では,90歳未満群と比べて女性が多く,併存疾患を有する率も高率で,術後合併症発生率は44%と90歳未満の20%と比べ有意に高値であった.90歳以上の超高齢者群における術後死亡率は9.6%と,79歳以下と80~89歳の2群の死亡率と比較して高値を示し,待期・緊急手術両方とも90歳以上の超高齢者群で有意に高率であった.特に,術前併存疾患がある場合と術後合併症発生例において,超高齢者群で術後死亡率が有意に高かった.多変量解析で超高齢者の術後死亡に影響する有意な要因は,術後呼吸器合併症であった.考察:90歳以上の超高齢者の手術で,術前併存疾患を伴う症例や術後合併症を伴う症例では術後死亡率が高く,慎重な手術適応と術後管理を要するものと考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top