抄録
76歳,男性.腹部CT検査で肝腫瘤を指摘され入院となる.腹部CT検査では腫瘍は肝S1のSpiegel部に位置し下大静脈内に腫瘍栓を形成していた.下大静脈造影では腫瘍栓上縁は肝静脈下大静脈合流部に達していなかった.術中腫瘍栓遊離による肺梗塞予防の目的で,下大静脈フィルターを留置して,尾状葉切除術,腫瘍栓摘出術を行った.下大静脈の血行遮断は肝静脈下で可能であり,THVE(Total hepatic vascular exclusion)の必要はなかった.残肝再発・肺転移で術後16カ月に永眠された.下大静脈腫瘍栓を伴う原発性肝細胞癌の予後は不良であるが,積極的な切除を行うことにより予後の改善が得られる可能性があると思われた.術後の予後改善のためには,有効な補助化学療法や肝内,肝外再発に対する化学療法の確立が今後の課題である.