日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹会陰式直腸切断術後早期に人工肛門壊死をきたした腸間膜脂肪織炎の1例
日高 英二遠藤 俊吾辰川 貴志子石田 文生田中 淳一工藤 進英
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2008 年 69 巻 7 号 p. 1800-1803

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抄録

直腸癌に対する直腸切断術の周術期に,S状結腸間膜脂肪織炎により人工肛門壊死をきたした症例を経験したので報告する.症例は41歳,男性.下部進行直腸癌に対して,術前化学放射線治療後に腹会陰式直腸切断術を施行した.術後より発熱,炎症反応が持続し,第13病日に人工肛門壊死・穿孔をきたし,再手術を施行した.開腹所見では,後腹膜からS状結腸間膜のびまん性肥厚と硬化,これに伴う下行結腸からS状結腸人工肛門まで内腔の狭小化を認めた.さらに小腸の一部は癒着により一塊となっていた.人工肛門部から下行結腸の狭小,硬化している部分を切除し,下行結腸肛門側断端を左上腹部に誘導し,人工肛門を再造設した.また一塊となった小腸は剥離が困難であったため切除した.組織学的には腸間膜脂肪織炎と診断された.術後早期にS状結腸人工肛門を造設した腸間膜に発症した脂肪織炎は比較的稀であり,文献的考察を加え報告する.

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© 2008 日本臨床外科学会
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