日本臨床外科学会雑誌
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症例
S状結腸癌による全結腸壊死型閉塞性大腸炎の1例
大石 幸一小出 圭福田 三郎先本 秀人江藤 高陽高橋 信
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2008 年 69 巻 8 号 p. 2038-2042

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抄録

症例は71歳,男性.腹痛嘔吐を認めたため当院を受診した.腹部CT検査でS状結腸に腫瘤像およびその口側腸管の拡張を認めたため大腸癌イレウスと診断され入院となった.経肛門的に減圧チューブを挿入し加療を行うも翌日早朝にショック状態となり,大腸穿孔の疑いで緊急開腹手術を施行した.腹腔内には腹水を認めたが漿液性であった.S状結腸に腫瘍を認め,盲腸からS状結腸までの腸管は拡張し,緑褐色調に壊死していた.結腸全摘後,回腸直腸吻合を行った.S状結腸腫瘍の病理診断は高分化腺癌であり,盲腸からS状結腸まで広範囲に壊死していた.術後,DIC,肝不全,腎不全に対して集中治療を行い救命しえた.腹部CT検査で口側大腸の拡張が著明な大腸癌イレウスは,重篤な壊死型閉塞性大腸炎を呈する可能性があり,初期治療として減圧チューブによる保存的治療を行いつつも,早急な手術の必要性にも留意すべきと考えられた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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