日本臨床外科学会雑誌
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症例
ヘルニア嚢内で空腸軸捻転をきたした腹壁瘢痕ヘルニアの1例
福原 研一朗大村 泰葛城 邦浩竹村 雅至藤原 有史吉田 佳世
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2009 年 70 巻 1 号 p. 253-256

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抄録
症例は77歳,男性.67歳時にS状結腸切除を施行,術後腹壁瘢痕ヘルニアを生じていた.入院前日より嘔気あり,翌朝に右下腹部痛出現し,受診した.腹部に縦20cm×横30cmの巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを認めた.筋性防御なく,腸蠕動音聴取できず.ヘルニア部にのみ圧痛を認めた.腹部エコーで拡張した小腸内に液体が貯留,蠕動は認めず.腹部CTでヘルニア嚢内にのみ少量の腹水と遊離ガスをごく少量認め,ヘルニア門付近で軸捻転を確認した.そこで腹壁瘢痕ヘルニア嚢内での空腸軸捻転による小腸壊死穿孔と考え,手術を施行した.上腸間膜動脈を軸に約400度の軸捻転をきたし,Treitz靱帯より約50cmの部位より約130cmの空腸壊死を認め,壊死部位の切除・人工肛門を造設した.術後経過は良好で術30日目に人工肛門を閉鎖した.巨大な腹壁瘢痕ヘルニア嚢内では捻転は起こしにくいとされるが,術10年後に軸捻転をきたし,手術で救命しえた.
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© 2009 日本臨床外科学会
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