2009 年 70 巻 2 号 p. 548-553
今回われわれは,膵内副脾に発生したepidermoid cystの1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.平成13年9月,検診の超音波検査で膵尾部に嚢胞性病変を指摘され,近医にて経過観察されていた.しかし,腫瘤の増大傾向を認めたため,精査目的にて当院紹介となった.血液生化学検査では異常は認めなかった.CT検査では,膵尾部に大きさ2×2cm,単胞性で,壁に造影効果を認める嚢胞性病変を認めた.また,MRIではT1強調像で低吸収域,T2強調像で等吸収域を示していた.画像所見から膵嚢胞性疾患と診断し,悪性疾患も否定できないと判断,平成14年8月,手術を施行した.術中迅速病理診断を行ったところ,副脾を原発とするepidermoid cystとの結果であったため,腫瘤核出術のみ施行した.副脾の存在は珍しくないが,嚢胞性疾患の発生は極めて珍しい.過去の報告例を集計し,若干の文献的考察を加えて報告する.