四国公衆衛生学会雑誌
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精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける県型保健所保健師の調整機能に関する文献検討
大村 知世辻 京子
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2026 年 71 巻 1 号 p. e7-

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抄録

【目的】精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおいて、広域行政を担う県型保健所保健師の役割を明確化するため、地域生活を阻害する「個人要因」と「環境要因」を概観し、その支援のあり方を広域的・重層的な視点を持つ調整機能として整理する。

【方法】文献検索は、医学中央雑誌Web版を用い、2017年から2025年に発行された原著論文および総説を対象とし、「精神障害」「地域包括」「自立支援」「地域生活」「保健師」のキーワードを組み合わせた検索式により、213編を抽出した。除外基準に基づき、最終的に16編を分析対象文献とした。分析では、自立を阻害する要因を「個人要因」と「環境要因」に分類整理し、これらの要因に対応する県型保健所保健師の支援を広域行政の特性を活かした地域包括ケアにおける調整機能として整理した。

【結果】自立を阻害する個人要因として、生活スキル(IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作))の低下や病識欠如、支援へのアクセス途絶が示された。一方、環境要因としては、社会的スティグマ、制度上の対象範囲の制限、専門的知識や経験の不足、家族機能の限界化が確認された。県型保健所保健師は、市町村との協働による重層的な支援体制の構築や社会的孤立者へのアウトリーチによる支援導入、措置入院業務を通した精神障害者への予防的支援を担っていることが明らかになった。また、自己効力感といった内的資源がリカバリーに深く関与していた。

【考察】精神障害者の自立には、個人要因と環境要因への統合的アプローチが必要であり、県型保健所保健師は、広域行政の特性を活かし、課題解決のために二重の調整機能を担う。一つは、広域的な環境整備の調整機能として、社会的スティグマの解消や社会資源の創造と調整を行うことである。もう一つは、個別的・予防的介入の調整機能として、市町村を補完するセーフティネットを担い、困難事例への専門的介入や心理教育的支援による自己効力感・セルフマネジメント能力の向上を支援することである。

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