抄録
急性乳び腹膜炎(Acute chylous peritonitis)は非常に稀な疾患であり,文献的にはほとんど報告がない.今回われわれは腸軸捻転で発症し,急性乳び腹膜炎を呈した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は73歳,男性.夕食後,突然の激しい腹痛にて発症,救急外来を受診した.既往歴にS状結腸切除術,胃切除術があった.来院時,理学所見では腹部全体が板状硬であり,高度の圧痛を認めた.腹部超音波検査,および腹部CT検査では中等量の腹水と腸管拡張像がみられた.腹水穿刺を施行し,乳白色の乳び腹水を認めた.急性腹症の診断で開腹したところ,術後性癒着を誘因に小腸がゆるく軸捻転しており,その表面は乳白色でリンパ管の拡張が見られ,虚血性変化はほとんどなく,捻転解除のみで腸切除は必要なかった.腹水はズダンブラック染色陽性粒子を含んでおり,乳び腹水と診断した.術後経過は良好であった.本症例は,ゆるい腸軸捻転部分のリンパ系のうっ滞をきたし乳び腹水を呈したと考えられ,捻転解除のみで腸切除は必要なく予後良好であった.