2009 年 70 巻 4 号 p. 1091-1094
症例は63歳,男性.40年前に髄膜瘤に伴う神経因性膀胱に対し,回腸を導管として用いた膀胱皮膚瘻形成術を施行した.その後,結石による尿路閉塞を認めたため,尿管皮膚瘻を形成したが,5年後,慢性腎不全により人工透析が導入された.平成20年4月,回腸導管皮膚開口部からの出血を主訴に来院し,瘻孔造影で回腸導管に隆起性病変が確認されたため,回腸導管腫瘍の診断で,回腸導管および膀胱部分切除を施行した.病理学的検査で回腸粘膜より発生し,膀胱へ進展する回腸癌を認めた.腸管を用いた尿路変向術は広く行なわれているが,近年それらを発生母地とする悪性腫瘍の報告が散見される.今回,われわれは回腸導管による尿路変更術後,40年を経て発生した回腸癌の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.