日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前診断した右鼠径部子宮内膜症の1例
今津 浩喜溝口 良順
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2010 年 71 巻 2 号 p. 537-540

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抄録

症例は43歳,女性.10年位前から恥骨右側部が増大,生理時痛を伴い腫張が大きくなるため当院受診.恥骨右側に径約5cmの不整な硬い皮下腫瘤を認め,CA125は72と上昇.超音波検査で39.6×23.5×32.3mm大の辺縁不整な低エコー像,CT検査は右鼠径部から恥骨前面に不均一に造影される不整な腫瘍像が描出された.臨床経過から異所性子宮内膜症を疑い腫瘤ABCを行い内膜症の診断を得た.本人希望にて手術治療を施行.腫瘤は円靱帯から恥骨前面まで連続し円靱帯と共に摘出した.腫瘤は5.5×5×4cm大で辺縁不整,弾性硬で割面は充実性であった.病理では線維性組織内に子宮内膜間質を伴う内膜腺を認め,子宮内膜症と診断した.術後1年経過,再発は認めず.本症の診断には病歴の聴取が最も重要で,鼠径ヘルニア診断の鑑別診断の一つに上げることが診断に最も重要と思われた.治療に際して外科的切除以外でも予後がよいことから術前ABCは選択されうる検査と考えた.

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© 2010 日本臨床外科学会
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