日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
腹腔鏡下生検により診断したびまん性腹膜中皮腫の1例
大島 秀紀木村 雅美前田 豪樹長谷川 格平田 公一
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 3 号 p. 844-849

詳細
抄録

症例は66歳,男性.腹部膨満を主訴に前医を受診.腹部単純X線写真で腸閉塞症と診断され,精査加療目的で当院紹介入院となった.腸閉塞症は保存的に軽快したが,腹部造影CT検査で壁側腹膜,腸間膜の肥厚の他,腹水の貯留を認め,小腸造影検査では空腸に狭窄像を認めた.腸閉塞の原因として,小腸腫瘍,あるいは悪性腫瘍の腹膜播種を疑い,診断と治療を目的に腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内所見として,粘液性,軽度混濁した黄色調の腹水を認め,腹膜,腸管漿膜上には無数の白色結節を認めた.採取した結節性病変の病理組織検査で,悪性腹膜中皮腫と診断された.術後早期にGemcitabine,Cisplatinによる化学療法を開始した.化学療法開始後,腹部CT上腹水の消失を認め,現在,外来通院中である.悪性腹膜中皮腫は未だ極めて予後不良な疾患ではあるが,その診断方法としての腹腔鏡検査が早期の診断,治療に有用と考えられた.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top