日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
71 巻, 3 号
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原著
  • 岩下 俊光, 末原 伸泰, 阿南 敬生, 西原 一善, 阿部 祐治, 玉江 景好, 阿部 英二, 豊島 里志, 光山 昌珠
    2010 年 71 巻 3 号 p. 619-626
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    肉眼的腹膜播種のない腹腔内洗浄細胞診陽性(P0cy1)ss以深胃癌の予後因子について検討した.腹腔内細胞診陽性率はP0 5.4%,P1 67%,ss 10% se 40% si 29%であった.ss以深胃癌987例のうちP0cy1胃癌は86例で,P0cy0,P0cy1,P1のMST(生存期間中央値),1年,2年,3年,4年,5年生存率は1678日,83%,70%,58%,51%,48%,446日,56%,30%,21%,14%,9.6%,244日,36%,18%,11%,3%,2%であった.P0cy1の予後はP0cy0とP1との中間に位置している.P0cy1胃癌の予後因子は単変量解析では肉眼分類,肝転移,リンパ節転移度,転移リンパ節個数,リンパ節郭清度,PM,DM,間質,INF,リンパ管侵襲,細胞診の細胞数,細胞診の細胞の大きさ,術後化学療法,化学療法の14因子であったが,多変量解析ではDM,リンパ節郭清度,術後化学療法の3因子であった.P0cy1ss以深胃癌の予後は不良だが,切除断端を陰性にし,D2以上のリンパ節郭清を行い,術後化学療法を行うことができれば予後が良好なことが期待される.
  • 石崎 哲央, 寿美 哲生, 安田 祥浩, 勝又 健次, 青木 達哉, 島津 元秀
    2010 年 71 巻 3 号 p. 627-633
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    目的:stageII大腸癌の再発危険因子を明らかにし,術後補助化学療法の適格症例を検討する.対象と方法:1993年1月~2005年12月の間に手術が行われ組織学的に根治度Aと診断されたstageII大腸癌195例を対象とした.再発の有無について各臨床病理学的因子を用い単変量解析を行い,多変量解析により再発危険因子を選択し,生存率解析を行った.結果:再発に寄与する因子は単変量解析で性,年齢,深達度,ly,vで有意差を認め,多変量解析でly,性,v,深達度が再発危険因子に選択された.これらの再発危険因子を2つ以上有する症例は再発率27.9%以上,累積無再発5年生存率61.2%であり再発高リスクstageIIと考えられた.再発高リスクstageIIにおいては術後補助化学療法の有無別で累積無再発5年生存率に有意差(p=0.53)を認めなかった.考察:再発危険因子はly,性,v,深達度であり,これらの再発危険因子を2つ以上有する症例は再発高リスクstageIIと考えられた.術後補助化学療法の効果についてはrandomized controlled trialが必要と考えられた.
  • 藤井 正一, 山岸 茂, 大田 貢由, 辰巳 健志, 渡辺 一輝, 諏訪 宏和, 大島 貴, 永野 靖彦, 市川 靖史, 國崎 主税, 大木 ...
    2010 年 71 巻 3 号 p. 634-642
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    大腸癌に対する腹腔鏡手術(LC)の健康関連生活の質(HQOL)の中期成績を評価することを目的に開腹手術(OC)と比較した.方法はcase-matched control studyとし,変数は性別,年齢(±10歳),ASA score(±1),手術年,部位(右側,横行,左側,直腸S状結腸および直腸),術式,TNM stage分類(0,I,II,III,IV)を合致させた.2007-2008年施行の術後12-24カ月経過症例に対しSF-36(自己記入式アンケート)で評価したHQOLと,術後回復期間を両群間で比較した.死亡例および同意が得られなかった患者を除いたLC43例とOC35例が対象であった.アンケート回答率は83.3%(LC83.7%,OC82.9%)で,両群の患者背景に差を認めなかった.下位尺度(LC:OC)のうち日常役割機能(身体)(52.0:45.1),日常役割機能(精神)(52.6:46.2)で,順序尺度の健康推移(72.9:59.5)で有意にLCが良好であった.他の項目では有意差を認めなかった.LCは同条件下では術後中期間の時点でOCよりも日常役割機能(身体と精神)と健康推移の面で良好なHQOLを示した.
  • 淺野 博, 大原 泰宏, 廣岡 映治, 多賀 誠, 小川 展二, 篠塚 望, 小山 勇
    2010 年 71 巻 3 号 p. 643-647
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    はじめに:鼠径部ヘルニアに対してのメッシュを用いた修復法は一般的となったが,嵌頓症例においては感染の面から敬遠されることが多く,腸管壊死を伴い腸管切除を要する場合には最近まで禁忌とも言われてきた.今回われわれは鼠径部ヘルニア嵌頓症例に対するクーゲル法による修復術について検討した.対象:2006年1月より2008年12月までに当科で施行した鼠径部ヘルニア嵌頓症例は67例であり,45例はクーゲル法による修復を行い22例は従来法(McVay法あるいはiliopubic tract法)で行った.結果:腸切除を要したものはクーゲル法では9例(20.0%)で従来法では16例(72.7%)であった.クーゲル法では創感染や縫合不全などの合併症はなく再発も見られなかった.結語:嵌頓症例に対するクーゲル法による修復術は症例によっては可能であると思われた.
臨床経験
  • 大目 祐介, 河本 和幸, 金城 昌克, 守本 芳典, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
    2010 年 71 巻 3 号 p. 648-653
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    孤立性上腸間膜動脈解離(以下SMA解離)は稀な疾患であり,治療法に関して一定の見解は得られていない.今回,われわれは1995年1月から2008年12月までの間に,孤立性上腸間膜動脈解離と診断した9症例の患者背景,発症様式,症状,治療法および転帰について検討した.
    9例全例が男性で,平均年齢は56.8歳であった.8例は造影CT,1例はMRIにて診断した.8例に喫煙歴を認め,5例が高血圧の既往を持っていた.偽腔開存型解離が4例,偽腔閉鎖型が5例であった.全例が降圧療法,抗凝固療法,抗血小板療法などの保存的加療で良好な経過が得られている.
    SMA解離は,多くの場合保存的治療が有効な予後良好な疾患である.ただし,偽腔開存型SMA解離症例は偽腔閉鎖型に比して,より慎重で長期的な経過観察が必要であると考えられた.
  • 水内 祐介, 渡部 雅人, 末原 伸泰, 古賀 健一郎, 玉江 景好, 光山 昌珠
    2010 年 71 巻 3 号 p. 654-658
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    右鎖骨下動脈起始異常に伴うnonrecurrent inferior laryngeal nerve(NRILN)の存在を予測できた食道癌症例に対する腹臥位胸腔鏡下食道切除術を経験したので報告する.症例は73歳男性,胸部つかえ感があり,上部消化管内視鏡で胸部中部および下部食道癌と診断された.CTで右鎖骨下動脈起始異常を認め,NRILNの存在が推測された.手術は腹臥位で胸腔鏡下に行い食道後面を横走し右側を上行する右鎖骨下動脈を認め,右迷走神経から反回する神経はなく,頸部操作で右迷走神経から直接分枝するNRILNを確認した.NRILNは右鎖骨下動脈起始異常に伴う先天奇形で比較的まれなものだが,食道癌における反回神経周囲リンパ節郭清は食道癌の手術において非常に重要である.NRILNを伴う食道癌でもCTなどでその存在を推測し慎重にリンパ節郭清を行うことで,術後反回神経麻痺などの重篤な合併症を起こさない安全なリンパ節郭清が可能と思われた.本症例はNRILNを伴う食道癌に腹臥位胸腔鏡下食道切除術を行った本邦初の報告である.
  • 志田 大, 井上 暁, 真栄城 剛, 宮本 幸雄, 梅北 信孝
    2010 年 71 巻 3 号 p. 659-663
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    成人腸重積症のうち結腸重積症は癌によるものが60~80%とされる.これまで本邦で約60例の盲腸癌による成人腸重積症の報告がある.今回,当科で経験した盲腸癌による腸重積症6例について報告する.平均年齢:59.2歳(36~77歳).男性3例,女性3例.手術時期としては,緊急手術2例,整復せずに待機手術1例,注腸で整復後に待機手術3例.注腸で整復していた3例以外では,開腹時に自然に整復されていた1例,術中Hutchinson手技で整復後に切除1例,整復せずに切除1例であった.総合所見としての進行度はfStageI1例,fStageII3例,fStageIIIa2例であり,全症例が無再発生存中である.腸重積合併大腸癌はその症状の強さは一様ではなく,必ずしも緊急手術を行う必要はなかった.また,待機手術を選択した場合でも,必ずしも手術前あるいは切除前に整復する必要はなかった.
症例
  • 福井 貴巳, 水井 愼一郎, 桑原 生秀, 日下部 光彦, 横井 豊治
    2010 年 71 巻 3 号 p. 664-672
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    67歳,女性.両側乳房腫瘤を自覚し当科受診.右乳房はC領域に約2.0cm大の弾性硬の境界不明瞭な腫瘤を,左乳房はC領域に約1.5cm大の弾性硬の境界不明瞭な腫瘤を触知した.マンモグラフィでは,右C領域に微細石灰化とspiculaを伴う腫瘤を,左C領域には局所的非対称性陰影(FAD:focal asymmetric density)を認めた.乳腺超音波検査では,右C領域に径22×10mmのlow echoic lesionを,左C領域に径15×8mmのlow echoic lesionを認めた.両病変に対してcore needle biopsy,excisional biopsyを施行したところ,右側はinvasive carcinoma,apocrine carcinomaで左側はapocrine ductal carcinoma in situであった.両側乳癌の診断で両側胸筋温存乳房切除術および両側腋窩郭清を施行した.病理結果は,両側ともapocrine ductal carcinoma in situの残存を認めたが,リンパ節転移は認めず,ER:境界域,PGR:陰性,HER2:1+であった.
  • 青山 徹, 孟 真, 橋山 直樹, 松川 博史, 益田 宗孝
    2010 年 71 巻 3 号 p. 673-676
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.主訴は微熱.既往歴は他院で僧帽弁閉鎖不全症の診断で定期経過観察中であった.現病歴は,2007年9月下旬から微熱が持続した.近医を受診し精査の結果,感染性心内膜炎(IE)と診断された.加療目的に当院循環器内科入院となり,病状から保存的治療の方針となった.入院28日目に突然心窩部痛を訴えた.腹部超音波および腹部CTを施行したところ上腸間膜動脈瘤を認めた.上腸間膜動脈瘤の切迫破裂と考え,緊急手術を施行した.手術は,上腸間膜動脈結紮および動脈瘤縫縮術を施行した.術中,上腸間膜動脈を結紮しても遠位側腸管に虚血はみられず,血行再建は施行しなかった.術後,一時的に下痢症状がみられたが内服加療で経過良好となった.現在外来通院中である.感染性心内膜炎では,全身の動脈に感染性動脈瘤を形成している危険性があり,IE治療中および経過観察中の血管造影・造影CTが重要であると考えられた.
  • 菅野 博隆, 北村 正敏, 鈴木 謙
    2010 年 71 巻 3 号 p. 677-682
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.車にはねられ当院救急外来に搬送された.来院時四肢不全麻痺あるも胸部X線写真では異常なく,CT,MRIにて右血胸,縦隔血腫,頸髄圧迫,頸椎骨折,第3胸椎破裂骨折を認めICU入院.受傷4日後呼吸状態悪化し人工呼吸を開始した.同日挿入した右胸腔ドレーンより血性排液あり,翌日に膿性排液となり,CTで血胸の増悪,縦隔気腫も認めた.受傷6日後の内視鏡にて食道穿孔を認め,外傷性食道破裂と診断し同日緊急手術施行.頸部アプローチ下食道部分切除・食道瘻造設,開腹下胃瘻・腸瘻造設術施行.食道破裂は胸椎骨折の骨片による損傷が原因と考えられた.外傷性食道破裂は稀であり,胸椎骨折による損傷の報告はみあたらない.本症では早期診断が重要であるが困難な場合も多く,胸腹部外傷例では本症の存在も念頭に置いた注意深い経過観察が必要と思われた.
  • 愛洲 尚哉, 廣吉 基己, 大坪 大, 中村 吉貴, 山本 隆久, 中井 亨
    2010 年 71 巻 3 号 p. 683-689
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.2007年5月黒色便を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で胃体中部小弯に3型病変を認め,生検で中分化型腺癌であった.腫瘍マーカーは,血清CA19-9値656U/mlと著明な高値を認めた.胃癌cStage IBの術前診断で幽門側胃切除術を行った.手術時,病変は漿膜に浸潤し,2カ所の肝転移巣を認め,fStage IVであり治癒切除困難であった.標本の免疫組織学染色で,癌細胞の細胞質,間質にCA19-9の強陽性所見を認めた.術後一時的に血清CA19-9値79.5U/mlと低下したが,術後3カ月には血清CA19-9値の再上昇と共に,多発皮膚転移,肺転移をきたし,術後6カ月で永眠された.
  • 赤池 英憲, 花村 徹, 三井 文彦, 千須和 寿直, 宮澤 正久, 巾 芳昭, 宮田 和幸
    2010 年 71 巻 3 号 p. 690-695
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    58歳男性.検診の上部消化管造影検査にて,胃の異常陰影を指摘され当院受診.上部消化管内視鏡検査にて幽門部後壁にIIc病変を認めた.同部位からの生検にて胃癌(低分化腺癌)と診断され当科紹介.術前診断T2(MP)N0M0,StageIBにて幽門側胃切除術を施行した.術後の病理検査所見で索状・敷石状構造を示す部位を認めた.同部はsynaptophysin陽性であり胃小細胞癌と診断された.深達度はSMで早期癌であったが,No.6に2個の微小リンパ節転移を認めた.
    胃小細胞癌は極めて予後不良であり,早期より脈管侵襲や転移を起こしやすいことが,その一因と考えられている.本症例は早期癌であったが,リンパ節に微小転移をきたしていた.胃小細胞癌においては,早期癌であっても微小転移が存在している可能性が高いと考え,治療することが必要と考える.
  • 後町 武志, 石田 祐一, 高橋 直人, 三森 教雄, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦
    2010 年 71 巻 3 号 p. 696-701
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.進行胃癌に対する胃全摘術+脾摘術施行後S-1を内服中で再発徴候は認めていなかった.術後2年5カ月目に発熱,下痢,意識障害にて緊急入院.精査にてインフルエンザ桿菌性髄膜炎・菌血症を発症しているoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と診断した.抗菌剤,ステロイドによる治療で軽快し第50病日に退院した.OPSIは脾摘後に敗血症,髄膜炎などで突然発症する重症感染症で,発症すると高率に死亡することが知られている.予防として適切な予防的抗菌薬投与,患者教育,ワクチン接種が重要とされるが,脾摘後長期間経過後に発症することもあり,脾摘後患者では常にOPSIを念頭におく必要がある.今回われわれは胃癌に対する脾摘術後化学療法中に発症したインフルエンザ桿菌によるOPSIの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 清水 徹一郎, 瑞木 亨, 倉科 憲太郎, 佐田 尚宏, 安田 是和
    2010 年 71 巻 3 号 p. 702-705
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.心窩部痛を主訴に発症3日目に当科受診.腹部CT検査より十二指腸潰瘍穿孔と診断し緊急手術を施行した.十二指腸球部外側に径3.5cmの穿孔を認めたが,炎症性に癒着した大網や,腸間膜が硬化・短縮した空腸による閉鎖術は困難と判断した.胆嚢を切開してフラップを形成し,漿膜側を縫着して胆嚢パッチによる閉鎖術を施行した.経過良好で術後14日目に退院した.穿孔部の大きい十二指腸潰瘍穿孔の手術において,胆嚢を用いて穿孔部を閉鎖する術式は,大網や空腸が使えない場合に有用な選択肢と考えられた.
  • 橋本 健吉, 廣瀬 盟子, 原武 譲二, 中山 正道, 島 一郎, 磯 恭典
    2010 年 71 巻 3 号 p. 706-711
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.全身痛の症状があり,整形外科でリウマチ性多発筋痛症と診断され,ステロイド治療を開始.一旦軽快したが,疼痛が再燃していた.精査の結果,左下葉の肺腫瘍を指摘され,左肺下葉切除を施行した.病理診断では,扁平上皮癌と血管肉腫を含む癌肉腫であった.手術後に疼痛,炎症反応が劇的に改善したが,術後9カ月後に再び疼痛が増悪,炎症反応も上昇した.精査の結果,十二指腸に肺癌肉腫の単発転移巣を認め,膵頭十二指腸切除術を施行した.術後再び疼痛や炎症反応は改善,現在まで再発を認めていない.本症例は稀な血管肉腫成分を含む肺癌肉腫,および稀なその十二指腸転移再発の切除例である.また,臨床的には全身性疼痛を認め,腫瘍と疼痛の消長,CRP,IL-6値の増減がよく相関していた.悪性腫瘍によるリウマチ性多発筋痛症類似の症状は稀に見られるが,癌肉腫による報告は自験例が初めてである.
  • 櫻井 克宣, 塚本 忠司, 清水 貞利, 金沢 景繁, 山下 好人, 西口 幸雄
    2010 年 71 巻 3 号 p. 712-717
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    稀な十二指腸乳頭部神経内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は78歳,女性.肝機能異常を指摘され当院を紹介受診した.腹部CT検査で膵頭部に1.5cm大の腫瘤と肝内胆管の拡張を認め,精査加療目的に入院となった.上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部の粘膜の不整を認めた.同部の生検組織の免疫染色でCD56,synaptophysin,chromogranin Aが陽性で,神経内分泌細胞由来と考えられた.リンパ節郭清を伴う幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織検査結果は十二指腸乳頭部の神経内分泌腫瘍で,Ki-67/MIB1指数は低く,リンパ節転移を認めたため高分化型神経内分泌癌と診断された.患者は術後1年4カ月の現在,無再発健存中である.
  • 加藤 祐一郎, 山口 竜三, 神谷 順一
    2010 年 71 巻 3 号 p. 718-721
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は6歳,男児.急性虫垂炎に伴う汎発性腹膜炎と診断して緊急手術を施行したところ,虫垂に炎症所見はなく,回腸末端から15mm口側で小腸の腸間膜付着部が穿孔しており,回盲部切除術を施行した.切除標本を検索すると回腸の腸間膜付着部に径10mm大の嚢胞状病変があり,これが穿孔していた.嚢胞状病変は径2mmの小孔を介して回腸と交通していた.病理組織学的検査所見では,嚢胞状病変の内面は小腸粘膜で覆われ,壁には平滑筋層が存在し,正常の回腸と同様の構造を呈していたため重複腸管症と診断した.重複腸管症は比較的稀な疾患であり,穿孔の本邦報告例は17例のみである.
  • 蒲生 佳代, 山本 義一, 高石 聡, 佐久間 洋一, 舟波 裕, 飛田 浩司
    2010 年 71 巻 3 号 p. 722-726
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    小腸重積を繰り返したPeutz-Jeghers症候群の1例を経験したので報告する.症例は22歳女性.2001年に小腸重積を発症し重積解除・ポリープ切除術を施行された.家族歴,色素斑および組織学的所見よりPeutz-Jeghers症候群と診断された.2006年に再度小腸重積を発症し,保存的治療にて軽快したが,その後の消化管造影にて小腸ポリープが確認された.2007年に経口的小腸内視鏡を用いてポリープ切除をしたが,Treitz靱帯付近の4cm大のポリープのみは切除不可能であった.2008年5月に3回目の小腸重積で入院し,手術を施行.5カ所の重積を解除後,小腸ポリープ計20個を切除した.小腸内視鏡で全てのポリープを切除することはできなかったが,2回の手術いずれにおいても腸切除を避け,短腸症候群のリスクを減らすことができた.今後も定期的な観察・治療が必要と考えられる.
  • 松橋 延壽, 國枝 克行, 田中 千弘, 加藤 浩樹, 長尾 成敏, 河合 雅彦
    2010 年 71 巻 3 号 p. 727-731
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.主訴は腹痛にて当院救命救急センターを受診した.腹部単純レントゲンにてfree airを認め穿孔性腹膜炎と診断され当科に紹介された.腹部CT検査にてfree air,小腸および大腸の著明な拡張像,大量腹水を認めた.また来院時脈拍180/分,呼吸数36/分,体温38.3℃とSIRS状態であり,緊急手術施行となった.術中所見では十二指腸球部にピンホール状の穿孔と約1,500mlの膿性腹水を認め,さらに盲腸を中心に同部が時計回りに360度回転した上に拡張しており,盲腸軸捻転症と診断した.術式は大網充填術および捻転部を解除し,盲腸固定術を施行した.術後ARDSおよびDICを併発したが,集中治療管理を行い,術後40日目に退院した.結語:穿孔性腹膜炎(十二指腸穿孔)に合併した盲腸軸捻転症は極めて稀であり,また術前診断にMDCTが有用であった.
  • 二村 浩史, 二村 聡, 山田 哲
    2010 年 71 巻 3 号 p. 732-735
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    虫垂憩室炎は比較的稀な疾患で,術前診断は困難である.今回術前腹部CTで虫垂憩室合併虫垂炎と診断し,手術を施行した患者を経験したので,文献的考察を含めて報告する.患者は54歳,男性.主訴は右下腹部痛で,触診にてMcBurney点に一致して圧痛,反動痛,筋性防御を認めた.体温37.7℃.白血球15,900/μl,CRP 3.1mg/dlであった.CTで盲腸多発憩室,多発憩室を伴う虫垂の腫大と脂肪織の混濁を認め,虫垂憩室合併虫垂炎と診断し,手術を施行した.虫垂憩室の一部が穿孔し,虫垂憩室炎合併急性蜂窩識性虫垂炎による限局性腹膜炎であった.虫垂憩室炎の穿孔率は27~66%と高く,急性虫垂炎における穿孔率の4倍以上との報告がある.腹膜炎を高率に合併し,容易に膿瘍形成や穿孔を生じやすいため,有症状でCT等により虫垂憩室を伴った急性虫垂炎と診断した場合は,炎症の程度にかかわらず保存的治療ではなく手術を選択すべきである.
  • 矢内 洋次, 水本 雅己, 宮原 裕子, 山野 剛, 浦田 洋二, 森本 泰介
    2010 年 71 巻 3 号 p. 736-741
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.主訴は下血.触診では右下腹部に小児頭大腫瘤触知し可動性は不良であった.CT・MRI上,虫垂から腸間膜に連続する径約17cm腫瘤を認めた.大腸内視鏡にて虫垂開口部に表面凹凸不整の隆起性病変を認め,生検での結果,非ホジキンリンパ腫と診断し手術を施行した.術中径10cmの虫垂腫瘍と,径9cmの回結腸動静脈周囲リンパ節と連続していた.周囲浸潤は無く右半結腸切除およびD3郭清を施行した.摘出標本では,腫瘍は表面平滑で周囲組織に浸潤を認めず,弾性軟腫瘍で割面は白色調であり,虫垂内腔は保たれていた.組織学的に,非ホジキンリンパ腫diffuse large B cell typeであった.術後のFDG-PETにて,虫垂外リンパ節病変を認めたため,R-CHOP療法施行し完全寛解となった.進行度評価にFDG-PETが有用で,系統的主病巣切除と化学療法が有効であった1例と考えられる.
  • 池西 一海, 成清 道博, 志野 佳秀, 中谷 勝紀
    2010 年 71 巻 3 号 p. 742-746
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    特発性大腸穿孔を2回発症した,まれな症例を経験した.症例は78歳の女性で,平成18年3月26日に特発性大腸穿孔を発症しハルトマン手術を施行され,外来に通院していた.平成21年2月1日突然の左下腹部痛を訴え精査加療目的で緊急入院した.保存的治療を行っていたが症状が増悪したため,大腸内視鏡検査を施行した.人工肛門より約5cm口側に径約3cmの巨大な楕円形の陥凹を認め,粘膜は壊死していた.腹部造影CT所見では腸間膜側に穿通し膿瘍腔を形成していたため手術を施行した.手術所見では人工肛門口側5cmに径3cmの穿孔部を認めた.病理組織学的検査所見上は憩室や潰瘍,炎症性疾患で穿孔していた所見はなく特発性大腸穿孔と診断した.このように特発性大腸穿孔を繰り返し発症した症例は本邦では過去に4例であった.特発性大腸穿孔は原因不明な要素も多く,繰り返し発症することもあるため外来で排便習慣の確認など注意深い経過観察が必要である.
  • 鳥口 寛, 端 裕之, 中島 康夫, 花房 徹兒
    2010 年 71 巻 3 号 p. 747-751
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は70代男性で,2006年11月に下痢,血便,嘔気を主訴に近医から当院へ転院した.翌日に腹痛の増悪を認め,CTにて遊離ガス像と多量の腹水を認め大腸穿孔の診断で緊急手術を施行した.穿孔部位は盲腸と横行結腸であり,結腸右半切除,回腸瘻造設術を施行した.しかし,腸炎の原因がつかめないまま術後4日目に再穿孔をきたし,2度目の緊急手術を施行した.回腸瘻の壊死および横行結腸脾彎曲部と下部直腸に穿孔を認め結腸直腸亜全摘,回腸瘻再造設術を施行した.初回術後10日目に摘出標本の病理学的診断にて赤痢アメーバ大腸炎と診断され,メトロニダゾールの投与を開始し軽快退院した.赤痢アメーバ大腸炎は近年日本でも増加傾向にあり,下痢,血便を主訴とする患者にあたっては本症も念頭におき,重篤な合併症をきたす前に適切に治療することが救命に重要である.
  • 椿原 秀明, 嶋田 浩介, 山口 和哉
    2010 年 71 巻 3 号 p. 752-756
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.慢性関節リウマチの既往あり.心窩部痛と下痢を主訴に近医を受診し,貧血と注腸造影検査での横行結腸の狭窄を指摘され当科を紹介受診した.大腸内視鏡検査で横行結腸,下行結腸にびらん・浮腫を伴う出血性腸炎像と一部に狭窄を認め虚血性腸炎と診断した.TPNを施行するも症状の改善なく,狭窄が増悪していったため,横行結腸・下行結腸切除術を施行した.摘出標本では粘膜の浮腫と広範囲に大きな縦走潰瘍がみられ,病理組織学的に腸管アミロイドーシスと診断した.アミロイドーシスは比較的まれな疾患であるが近年増加傾向にある.消化管はアミロイド沈着の頻度が高く,消化器症状の発現頻度は高率であるが,大腸では特異的な所見に乏しい.今回,われわれはアミロイド大腸炎として発症し,炎症が急速に進行して腸管の狭窄をきたし,広範囲に大きな縦走潰瘍を形成した症例を経験したので報告する.
  • 阪田 和哉, 小塚 雅也, 高瀬 功三, 山本 正博, 出射 由香
    2010 年 71 巻 3 号 p. 757-760
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.潰瘍性大腸炎発症後16年経過し,前回サーベイランス大腸内視鏡よりわずか10カ月の間に広範なリンパ節転移をきたした直腸癌を合併した1例を経験した.切除標本では多発し中分化から低分化腺癌を呈し,周囲に粘膜下層を主体とする壁内転移を多数認め,dysplasiaも伴っておりcolitic cancerと考えられた.珍しい症例と考え報告する,また,改めてサーベイランスの重要性が示唆された.
  • 十倉 正朗
    2010 年 71 巻 3 号 p. 761-765
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    直腸穿通が原因と考えられる良性直腸狭窄症例を経験した.症例は84歳の男性で,便秘,下腹部膨満感で受診,亜イレウス症状を認めたが,排ガス・軟便はみられた.身体所見や血液検査で炎症所見はなかった.直腸診で腫瘤を触知,腹部CT検査では直腸腫瘍性病変が,また注腸造影X線検査では直腸完全閉塞所見がみられた.大腸内視鏡検査では直腸狭窄と粘膜下腫瘍所見を認めたが,粘膜面に腫瘍はなく,狭窄部をどうにか通過できた.手術時狭窄部に腫瘍はなく,直腸Ra部腸間膜内を中心に炎症性硬化所見が見られた.切除直腸病理組織学的検査所見では悪性所見はなく,粘膜面から固有筋層,漿膜面へと貫く炎症性細胞浸潤と一部粘膜欠損がみられた.直腸穿通の原因として憩室炎が疑われた.
  • 鈴木 喜裕, 谷 和行, 白石 龍二, 利野 靖, 今田 敏夫, 益田 宗孝
    2010 年 71 巻 3 号 p. 766-770
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.2007年8月の検診にて左頸部腫瘤と右肺野異常影を指摘され当院受診した.精査にて転移性甲状腺癌,転移性肺癌と診断された.原発巣であるが病理組織形態や免疫染色の結果から大腸癌が疑われ,腸内視鏡検査を施行し上行結腸癌(病期IV)と診断された.治療は原発巣の狭窄が強いため2007年10月に結腸右半切除術を施行し,2007年11月よりmFOLFOX6を4コース施行した.2008年1月の効果判定ではNCであり他転移巣の出現もないことから,2008年2月に甲状腺左葉切除,右肺上葉切除を施行した.病理結果はmuc~mod SS N1 H0 M1 stage IVであった.術後経過は良好で,TS-1単剤にて術後化学療法を施行中である.また,術後1年3カ月になるが現在まで再発を認めていない.
  • 益満 幸一郎, 前村 公成, 青木 雅也, 田上 聖徳, 原口 尚士, 池江 隆正
    2010 年 71 巻 3 号 p. 771-776
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例1は78歳,男性.心窩部痛を主訴に来院.右下腹部に筋性防御,採血でCEAが高値.腹部X線,腹部CT所見で腹腔内遊離ガス像はないが,腸間膜内に異常なガス像があり,癌合併腹膜炎として緊急手術施行.上行結腸癌と腸間膜内に糞便を認め,右半結腸切除を施行.標本は上行結腸に1型の腫瘍と,その口側の腸間膜側に穿通があり,その粘膜には虚血性変化を認めた.症例2は73歳,男性.腹痛にて当院に救急搬送される.腹部CT検査で腸間膜内に異常ガス像を認め,上行結腸間膜穿通と診断,緊急手術施行.腸間膜内に多量の便塊と上行結腸癌を認め,右半結腸切除を施行.標本は上行結腸に3型の腫瘍と口側の腸間膜側に穿通部を認めた.病理では穿通部に循環障害を指摘された.いずれも比較的順調に経過し,退院した.本症は稀な腸間膜穿通を合併した上行結腸癌だが,診断には腹部CT検査が有用であり,緊急手術で一期的吻合を行い救命しえた.
  • 高坂 佳宏, 村山 弘之, 中山 文彦, 河内 順
    2010 年 71 巻 3 号 p. 777-780
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.頭痛,発熱を主訴に当院受診.項部硬直を認める以外異常な神経所見はなかったが,髄液検査にて高度の細胞数上昇を認め,髄膜炎の診断にて内科に入院し,抗菌薬治療を行った.入院時の髄液培養は陰性だったが,血液培養にてStreptococcus bovisが検出されたため,軽快退院後,消化管腫瘍精査を行ったところ,S状結腸に2型の癌を認めたため外科へ再入院し,S状結腸切除術,D3郭清を施行.病理結果は中分化腺癌,ss,ly1,v1,n1,Stage IIIaであった.本邦では,Streptococcus bovisと大腸癌との関連性の認識がまだまだ低いと考えられるため,文献的知見を加えて報告する.
  • 林 昌俊, 安村 幹央, 木山 茂, 上松 孝
    2010 年 71 巻 3 号 p. 781-784
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.主訴は便秘,下部消化管検査でS状結腸に2型の腫瘍を認めた.生検では高分化型腺癌であった.腹部CT,MRI検査で肝S6,右副腎に腫瘍を認め,肝,副腎転移を伴うS状結腸癌と診断し,S状結腸切除術,肝後区域切除術,右副腎摘出術を施行した.肝,副腎とも高分化型腺癌を認めpSE,pN2,sH1,sM1(副腎)fStage IVと診断した.化学療法は施行せず術後6年経過し無再発生存中である.大腸癌の副腎転移は発見された時には多発性転移を伴うことが多く,切除例は少ない.副腎以外に遠隔転移巣があっても,原発巣,遠隔転移巣とも切除可能であれば,外科的切除により長期生存を得られる可能性が示唆された.
  • 矢内 勢司, 今田 世紀, 權 雅憲
    2010 年 71 巻 3 号 p. 785-789
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.1カ月前に,全身の関節痛と下痢を主訴に近医受診し,通院加療で症状軽快した.2日前より38~40℃台の発熱みられ,血液検査上,高度の炎症反応を認めたため,当院を紹介された.腹部CT,超音波検査の結果,肝膿瘍の診断のもと緊急入院となった.入院後,メロペネムの投与を開始したが,解熱傾向が見られなかったため,経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行した.黄色膿性液を吸引したが細菌検査,細胞診ともに陰性であった.PTAD施行翌日より38℃以下まで解熱傾向を示し,症状,炎症反応ともに改善したため,並行して肝膿瘍の原因検索を施行した.注腸検査で,Rb前壁に径4cm大の潰瘍性病変を認め,直腸癌の診断で,Miles手術を施行した.病理組織学的には,中分化型腺癌で,深達度は,Aで,リンパ節転移や腹膜播種,遠隔転移は見られず,StageIIであった.肝膿瘍の原因検索として,可及的早期の消化管検索が重要と考えられた.
  • 若杉 正樹, 南村 圭亮, 梅村 彰尚, 菊一 雅弘, 平田 泰, 坂本 昌義, 藤井 晶子, 森 正也
    2010 年 71 巻 3 号 p. 790-795
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.2006年4月,直腸癌に対し低位前方切除術,D2リンパ節郭清,DST(Double Stapling Technique)再建を行った.総合所見はRb,2型,17×17mm,tub1,pMP,pN0(0/16),ly0,v1,sH0,sP0,cM0,Stage Iであった.術前正常域であったCEAが術後1年9カ月で上昇したため,上部・下部消化管内視鏡検査,CT検査を行ったが明らかな再発を認めなかった.PET/CT検査で腹直筋に集積を認め,CTガイド下針生検で腺癌であったため2008年5月,手術を施行した.腹水,腹膜転移,肝転移,腸間膜リンパ節転移を認めず,恥骨直上の腹直筋に径4cm大の硬結を触知した.前回の開腹創との連続性は明らかでなく,腹腔内への露出はなく,直腸癌術後腹直筋転移と診断し,腹直筋部分切除術およびメッシュを用いた腹壁再建術(inlay mesh repair)を行った.病理診断は直腸癌腹直筋転移に矛盾しない所見であった.術後補助化学療法としてFOLFOX4を6クール終了後,経口抗癌剤UFT/UZELを内服しているが,術後1年5カ月で再発はなくCEAは正常化した.
  • 山中 潤一, 吉田 康彦, 藤元 治朗
    2010 年 71 巻 3 号 p. 796-800
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡肝切除の報告が増加しているが,肝右葉頭側の大型腫瘍に対し鏡視下アプローチを用いた肝切除の報告は少ない.今回肝S7,S8を占める径7cmの限局性結節性過形成(FNH)に対し,腹腔鏡補助下肝後区域および前背側区域切除を施行した症例を報告する.症例は36歳女性,近医で右肝腫瘍を指摘され紹介受診した.腹部造影CTで早期相から後期相まで濃染が持続する辺縁不整な腫瘍を認めた.生検で悪性を否定しえず,破裂の可能性もあり,患者自身が切除を希望したため,術前肝切除シミュレーションに基づき,手術を施行した.切除標本病理組織で線維性隔壁内に細胆管増生を認め,FNHと診断された.肝右葉頭側病変に対し鏡視下アプローチを用いた肝切除の欧文論文は13報告と未だ少ない.自験例は術後20カ月健存中で,3D画像支援による詳細な手術計画の立案により,低侵襲性と安全性を兼ね備えた腹腔鏡補助下肝切除術を完遂しうると考えられた.
  • 田中 貴之, 川下 雄丈, 岩田 亨, 川原 大輔, 宮原 晋一, 兼松 隆之
    2010 年 71 巻 3 号 p. 801-806
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.慢性心不全の加療中に肝S4/5/8を占拠する腫瘍と総胆管結石を指摘され当科紹介.肝予備能は低下していたが,手術施行.腫瘍は肝表面から突出し広汎な腫瘍結節,腹膜播種を認め,手術不能と判断し総胆管結石載石と肝腫瘍部と正常部より生検を行い閉腹.病理結果で,腫瘍は大型の異型核を持つ腫瘍細胞が特定の配列を示さず増殖.銀染色で細網線維が少数の腫瘍細胞を取り囲み,腫瘍細胞の短い索状配列や腔形成.免疫組織学的所見にて肉腫に特異性の高いVimentin(VM)陽性,上皮性マーカーのCytokeratinAE1/AE3陽性,一方肝細胞系統のマーカーのAFP微弱陽性,CD10陽性,Hepatocyte antigen陰性であり,sarcomatoid hepatocellular carcinomaと診断.その後,TAE施行するも,診断確定後約4カ月で永眠された.本症例のごとく中心壊死を有する肝腫瘍の鑑別としてsarcomatoid HCCの存在を念頭に置く必要があり,その悪性度の高さから,迅速に治療を考慮する必要がある.
  • 村上 昌裕, 小林 省吾, 永野 浩昭, 武田 裕, 土岐 祐一郎, 森 正樹
    2010 年 71 巻 3 号 p. 807-812
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.2005年2月に肝機能異常および下部胆管の狭窄を認め,診断目的でERCPを試みたが施行不能であったため,経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)を施行した後,4月下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.2008年1月(術後32カ月目)腹部造影CT検査で前回のPTBD穿刺ルートに一致して,肝表面(S3)に再発が疑われたため,2008年2月より全身化学療法(gemcitabine)を6クール施行した.その後,他部位への転移・再発を認めず孤立性の局所再発と判断し,10月に再発腫瘍切除(肝S3亜区域切除術および腹壁合併切除)を施行した.切除標本では肝実質内に単発で白色の充実性腫瘍を認め,病理検査では前回と同様の中分化型腺癌であり,最終的に胆管癌のドレナージ部再発と診断された.下部胆管癌術後にPTBD穿刺ルートに再発し切除しえた1例を経験したので,これを報告する.
  • 黒田 暢一, 大橋 浩一郎, 藤元 治朗
    2010 年 71 巻 3 号 p. 813-816
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.偶然発見された肝嚢胞の精査中に膵頭部の嚢胞性病変を指摘された.腹部CTにて膵頭部に直径5cm大の嚢胞様病変を認め,内部に造影効果を示す三日月状の実質部が見られた.ERCP上膵管像は正常であったが,膵液中K-ras遺伝子の異常を認め,悪性の可能性もある嚢胞性膵腫瘍と診断,手術を施行した.術中所見にて腫瘍は表面平滑,軟で膵頭部表面に半球状に突出し周囲膵組織への浸潤を認めなかった.充実性の部分を術中病理迅速診断に提出したが悪性所見はなく腫瘍核出術で手術を終了した.腫瘍は単房性の嚢胞で内容は粘調な硝子様の液体で,嚢胞壁に黄色の充実性腫瘤を伴っていた.組織学的には実質部と嚢胞壁にS-100蛋白陽性の紡錘形の細胞を認め神経鞘腫と診断された.術後8年後の現在再発は認めていない.嚢胞性腫瘍像を呈した稀な膵神経鞘腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 赤羽 和久, 小木曽 清二, 坂口 憲史, 橋本 瑞生, 石川 玲, 加藤 健宏
    2010 年 71 巻 3 号 p. 817-822
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.平成18年10月下旬,意識混濁のために当院救急外来へ緊急搬送された.受診時に意識は回復しており神経学的な異常所見は認めなかったが,左下腹部に手拳大の腫瘤を触知した.直腸診では直腸前壁左方向に腫瘤と圧痛を認めた.腹部CTにて直腸S状部に腸管の壁肥厚像を認め,病変部腸管と子宮および左付属器との境界は不明瞭であった.また,子宮内腔にair fluid levelを認めた.注腸検査では直腸S状部に不整狭窄像を認めた.以上から直腸癌と子宮留膿腫の合併を疑い,低位前方切除術ならびに子宮および左付属器合併切除術を施行した.直腸腫瘍は子宮へ浸潤して瘻孔を形成しており,病理検査では子宮内腔まで癌の浸潤を認めた.本症例は直腸癌の子宮浸潤により直腸子宮瘻が形成され子宮留膿腫を呈したものと考えた.
  • 長野 貴彦, 野田 伸一, 金子 洋一, 堀川 佳朗, 石神 純也, 夏越 祥次
    2010 年 71 巻 3 号 p. 823-827
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.腹痛と発熱を主訴に受診し,腹部CTで左側腹腔内に多房性の腫瘤を認めた.腹腔内膿瘍の診断で抗生剤を投与し,膿瘍の縮小と症状の改善を認めたため,退院した.しかし,2カ月後に腹痛と発熱が再燃し,膿瘍が増大したため,手術を施行した.手術所見では壁側・臓側腹膜に多数の白色結節ならびに高度な癒着を認め,大網および腸間膜組織内の肉芽腫性病変を切除した.術後の病理診断でウエステルマン肺吸虫が原因であると判明し,問診にてイノシシの生肉の摂取歴が確認された.術後はプラジカンテルの内服加療を行った.腹腔内膿瘍の原因として,憩室穿孔,魚骨による穿孔など様々であるが,寄生虫疾患も念頭に置き,鑑別診断を行う必要がある.
  • 五味 邦之, 代田 廣志, 島田 宏, 矢澤 和虎, 梶川 昌二, 中村 智次
    2010 年 71 巻 3 号 p. 828-832
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.検診超音波で腹腔内腫瘤を指摘され当院を受診した.腹部CTで肝下面に径10cm大で嚢胞性成分と充実性成分が混在する腫瘤を認め経過観察とした.3カ月後には腹部膨満感が出現し,腹部CTで腫瘤は左上腹部に移動し腫瘤径が増大していたため摘出術を予定していたが,術前に腹部膨満感の消失と貧血が出現.腹部CTにて腫瘤の縮小と腹腔内出血の所見があり腫瘍破裂による腹腔内出血と診断.開腹術を行ったところ血性腹水と小網に基部をもつ有茎性の嚢胞性腫瘤が認められ摘出術を行った.病理組織学的診断でKIT,CD34が陽性であり小網原発GISTと診断された.術前に腹腔内出血をきたしたためClinical malignat GISTとなるが術後補助療法は行わず経過観察を行っており,術後9カ月経過した現在まで無再発である.小網原発の有茎性GISTは極めて稀であり今後も厳重な経過観察が必要と考える.
  • 永吉 盛司, 高江洲 享, 長嵜 悦子, 上江洲 徹, 下地 光好, 赤崎 満, 喜友名 正也
    2010 年 71 巻 3 号 p. 833-838
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,女性.発熱,嘔吐を主訴に来院し胃腸炎を疑われて入院した.翌日朝より下腹部痛が出現し徐々に痛みが増強し,その晩ショック状態となった.腹部X線写真では右側結腸壁に沿って石灰化が存在しており,腹部CTでは上行結腸から横行結腸にかけての壁肥厚と石灰化を認めた.また腹水とfree airを認めたため消化管穿孔による汎発性腹膜炎を疑い緊急開腹手術を行った.術中所見では膿性の腹水を認め,盲腸から下行結腸にかけて腸管壁は暗紫色調で硬く触知した.上行結腸に径約1cmの穿孔部を認め虚血性腸炎が原因の大腸穿孔と診断し,色調不良であった回腸末端から下行結腸を切除し回腸瘻を造設した.術後の病理検査では静脈壁の線維性肥厚と静脈周囲の石灰化,粘膜下層の線維化が認められ腸間膜静脈硬化症と診断された.
  • 大島 隆一, 湊 栄治, 櫻井 丈, 吉田 和彦, 嶋田 久, 大坪 毅人
    2010 年 71 巻 3 号 p. 839-843
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.下腹部痛および嘔吐を主訴に来院.腹部単純X線および腹部CT検査にて著明な小腸の拡張像および鏡面形成を認めイレウスと診断.さらに骨盤付近にループ状に拡張した造影効果が不良な腸管を認めた.以上より,内ヘルニアによる絞扼性イレウスを疑い同日緊急手術を施行した.手術所見は,S状結腸間膜に径1cmの異常裂孔が存在し,回腸末端から140cmの小腸が約10cm嵌入し暗赤色に変化していた.用手的にイレウスを解除し観察したところ,絞扼腸管の色調は改善を認めたため腸切除は行わず,裂孔部を閉鎖し手術を終了した.術後経過は良好で第10病日に退院した.S状結腸間膜の穿通性欠損部に腸管が嵌入する成人のS状結腸間膜裂孔ヘルニアは非常に稀な症例であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 大島 秀紀, 木村 雅美, 前田 豪樹, 長谷川 格, 平田 公一
    2010 年 71 巻 3 号 p. 844-849
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.腹部膨満を主訴に前医を受診.腹部単純X線写真で腸閉塞症と診断され,精査加療目的で当院紹介入院となった.腸閉塞症は保存的に軽快したが,腹部造影CT検査で壁側腹膜,腸間膜の肥厚の他,腹水の貯留を認め,小腸造影検査では空腸に狭窄像を認めた.腸閉塞の原因として,小腸腫瘍,あるいは悪性腫瘍の腹膜播種を疑い,診断と治療を目的に腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内所見として,粘液性,軽度混濁した黄色調の腹水を認め,腹膜,腸管漿膜上には無数の白色結節を認めた.採取した結節性病変の病理組織検査で,悪性腹膜中皮腫と診断された.術後早期にGemcitabine,Cisplatinによる化学療法を開始した.化学療法開始後,腹部CT上腹水の消失を認め,現在,外来通院中である.悪性腹膜中皮腫は未だ極めて予後不良な疾患ではあるが,その診断方法としての腹腔鏡検査が早期の診断,治療に有用と考えられた.
  • 丹後 泰久, 宇治 祥隆, 高尾 貴史, 入江 康司
    2010 年 71 巻 3 号 p. 850-854
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    右副腎領域に発生し,FDG-PETにて悪性腫瘍が疑われた後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は35歳,女性.心窩部痛と背部痛を認め,前医を受診.腹部CTにて,右副腎領域,下大静脈背側に6cm大の境界明瞭な充実性腫瘤像を認めた.MRI検査では,T1強調像にて低信号,T2強調像にて高信号の腫瘤であった.FDG-PET検査で,同部に高集積を認め,遅延像で集積の増加を認めた.右副腎癌を含めた悪性腫瘍の疑いで開腹手術を行った.腫瘍は表面平滑で境界明瞭であり,周囲組織への浸潤を認めなかった.病理組織学的所見はAntoni type A主体の良性神経鞘腫であった.術後11カ月,再発所見は認めていない.
  • 永井 健太郎, 稲川 智, 寺島 秀夫, 柳澤 和彦, 山本 雅由, 大河内 信弘
    2010 年 71 巻 3 号 p. 855-858
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.9カ月前に胃癌に対して胃全摘術(Roux-en-Y再建)を施行された.10日前より軽度の腹痛と便秘が出現し,当院外来を受診した.身体所見にて上腹部に軽度の圧痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,血液検査でも軽度の炎症反応の上昇を認めるのみであった.腹部レントゲンにて右側に偏在する大腸ガスを認め,亜イレウスと診断され,緊急入院となった.造影CT検査で右側結腸の拡張と壁の肥厚した小腸を認め,血管の渦巻き様構造を認めた.以上より内ヘルニアの診断にて,手術を施行した.開腹すると,結腸前経路で再建した挙上空腸と横行結腸との間隙から小腸ほぼ全域が入り込んでいた.腸管の絞扼や壊死は認められず,腸管を還納し,ヘルニア門を閉鎖して手術を終了した.術後腹部症状は軽快し,退院となった.胃癌術後の内ヘルニアの報告は少なく,文献的考察を加え,報告する.
  • 富永 哲郎, 生田 安司, 黨 和夫, 柴崎 信一, 内藤 愼二, 岡 忠之
    2010 年 71 巻 3 号 p. 859-862
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は58歳と60歳の男性.ともに右肩甲骨下部の腫瘤と疼痛を訴え来院した.いずれの症例でも肩甲骨下に弾性硬,境界不明瞭な腫瘤を触知した.胸部CTで低吸収域の腫瘤,胸部MRIでT1強調像・T2強調像ともに高信号域と低信号域が混在する腫瘤がみられた.発生部位と画像所見より弾性線維腫と診断し,腫瘤摘出術を施行した.病理組織は膠原繊維の増生と,elastic van Gieson stainで黒褐色に染まる弾性線維を認めたため,最終的に弾性線維腫と診断された.ともに疼痛は消失し,術後10カ月・5カ月再発はみられていない.
支部・集談会記事
編集後記
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