2010 年 71 巻 4 号 p. 923-927
症例は79歳,女性,平成17年3月,咳,痰を主訴に受診し,胸部レントゲンで左下肺野に6cm大の腫瘤陰影を指摘された.胸部CTで左肺S9に6×5cm大のair bronchogramを伴う腫瘤陰影を認めた.経気管支肺生検を含めた精査で確定診断が得られず,2カ月後の胸部CTで陰影の改善を認めたため,肺炎と考え経過観察していた.その後受診が途絶えていたが,平成19年7月,咳,痰が増悪したため再び受診した.胸部レントゲン,CTで陰影の増大を認めた.経気管支肺生検で細気管支肺胞上皮癌と診断され,同年11月左肺下葉切除術を施行した.腫瘍は9×8cm大の弾性軟な充実性の腫瘍で,永久標本で粘液産生型細気管支肺胞上皮癌と診断された.本症例は診断に苦慮したため,手術まで約2年8カ月を要した.若干の考察を加え報告する.