日本臨床外科学会雑誌
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症例
腸間膜に穿通した回腸憩室炎の1例
山下 修倉田 悟須藤 隆一郎善甫 宣哉中安 清濱野 公一
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2010 年 71 巻 4 号 p. 951-955

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抄録

消化管憩室の中で小腸憩室の頻度は2.7%とされ,稀な疾患である.本症は穿通・穿孔をきたすことは少ないが,それらをきたした場合,診断の遅れにより致命的となることがある.今回われわれは,回腸憩室が腸間膜に穿通し膿瘍形成から,限局性腹膜炎をきたした1例を経験した.症例は67歳男性.発熱・右下腹部痛を主訴に来院.右下腹部に限局した腹膜刺激症状を認めた.腹部単純CT検査で,回腸末端に腸管壁の肥厚と周囲に腸管外のair像を認めた.CRPの異常高値を認め,穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.回盲部付近の回腸に腸管壁の浮腫を認め,腸間膜に膿瘍を形成していたため回盲部切除術を行った.摘出標本では回盲弁から約13cm口側に回腸憩室を認め腸間膜に穿通し,膿瘍を形成していた.病理学的にも上記の所見が確認され,回腸憩室炎が腸間膜に穿通し膿瘍を形成したものと診断した.

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