2010 年 71 巻 6 号 p. 1413-1422
目的:成人鼠径ヘルニアの日帰り手術時における麻酔法として,われわれが行っているプロポフォールを併用した超音波ガイド下区域麻酔変法の評価について検討した.方法:本法の麻酔下にKugel法で手術を施行した成人鼠径ヘルニア症例116例を対象として,その麻酔効果とアンケート調査による患者満足度について検討した.結果:全症例中,本法のみの麻酔にて手術が完遂できたのは,87.9%であったが,腹膜前腔での丁寧な剥離操作や,症例によっては同部への十分な量の局麻剤の追加散布を行うようになった後半期における麻酔完遂率は,95.5%まで改善させることが可能であった.一方,術後嘔気などの有害事象の発生は見られず,患者満足度も良好であった.結論:本法は,局所麻酔法の利点を継承しながら種々の煩雑な手技を軽減し,有害事象も少なく,Kugel法における日帰りヘルニア修復術の麻酔法として有用な方法であると考えられた.