日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵頭部癌門脈合併切除後難治性乳糜腹水に酢酸オクトレオチドが著効をみた1例
筒井 麻衣野呂 拓史有田 宗史大平 寛典川崎 成郎鈴木 裕
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2010 年 71 巻 6 号 p. 1603-1609

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抄録

症例は49歳,男性.門脈浸潤を伴う膵頭部癌に対し,亜全胃温存十二指腸切除術+門脈合併切除を施行した.術後2日目より飲水,経腸栄養,6日目に食事開始したが,10日目より膵背側の留置ドレーンから3,500ml/day以上の乳糜腹水を認めるようになった.無~低脂肪の食事,絶食で経過観察するも明らかな腹水の減少は認められなかった.術後30日目より酢酸オクトレオチド300μg/day皮下注を開始したところ,翌日より排液量が著明に減少し,40日目に排液が0mlとなった.40日目に投与を中止し,41日目より食事を再開,42日目にドレーン抜去後,45日目に退院となった.術後乳糜腹水の発生には乳糜槽付近のリンパ節郭清や血管の合併切除,再建が深く関連していると言われる.全身状態の悪化を防ぐためにも,難治性術後乳糜腹水に酢酸オクトレオチド投与は効果的であると考えられる.

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© 2010 日本臨床外科学会
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