日本臨床外科学会雑誌
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症例
脾動脈結紮術で膵脾血流を温存した脾動脈瘤の1例
甲斐沼 孟山本 隆嗣渡辺 千絵田中 肖吾石原 寛治大野 耕一
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キーワード: 脾動脈瘤, 脾動脈結紮術, IVR
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2010 年 71 巻 6 号 p. 1610-1614

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抄録

症例は35歳,女性.健診の超音波検査で膵上縁に動脈瘤を指摘された.腹部血管造影検査で脾動脈起始部に径2cmの嚢状の動脈瘤を認め,破裂予防のためinterventional radiological treatment(IVR)を検討したが,瘤が大きく,流出入脾動脈の屈曲が強く,患者・家族へのinformed consentで小切開開腹となった.術前の動脈造影で瘤直前後の結紮で膵脾への側副血行による血流の温存が予想できた.動脈瘤への流入流出部で脾動脈をクランプし動脈瘤遠位側の膵脾への動脈血流維持を確認した後,脾動脈を結紮した.術後経過に問題なく,退院後の腹部dynamic CTでも瘤への血流はなく膵脾への動脈血流は保持されていた.脾動脈瘤はしばしば遭遇する疾患であるが,破裂する危険性があるため,瘤が発見された場合は何らかの治療が必要となる.多くはIVRが選択されるが,自験例のように瘤の形態や大きさ,存在部位などでIVRが困難である場合,開腹結紮術は一考されるべき治療である.

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© 2010 日本臨床外科学会
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