2010 年 71 巻 7 号 p. 1800-1805
症例は86歳,男性.8カ月前から下腹部痛,頻尿と尿の混濁が出現した.2つの病院を受診し治療を受けたが,症状が改善しないため当院泌尿器科を受診した.膀胱鏡検査を行ったところ膀胱壁に小孔があり便汁の流出を認めた.CTではS状結腸に多発する憩室を認め,S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻の診断で外科紹介となった.長期間の炎症と低栄養のため全身状態は不良であった.開腹手術を行ったところ,S状結腸に径1cm大の穿孔部を認め,周囲に膿瘍を形成し,内腔に0.7cm大の魚骨を認めた.膿瘍腔の奥には肥厚し硬化した膀胱壁が存在し瘻孔を認めた.S状結腸と膀胱の穿孔部を縫合閉鎖し,口側にS状結腸双孔式人工肛門を造設した.魚骨による大腸穿孔はまれに経験するが,大腸膀胱瘻を形成した症例は本邦で2例目である.